どれくらいの年齢から「老人」と言うのかという論議は別にしておいて、一般的に老人の三種の神器といわれる薬があります。まさにそれは三種類あって、眠り薬(睡眠薬)、血圧の薬(降圧剤)、お通じの薬(緩下剤)がそうです。まず、そのうちの眠り薬について書いてみます。
お年寄りには「眠り薬がないとどうしても眠れない。」「止めようと思うのだがどうしても飲んでしまう。」とおっしゃりながら眠るための薬を続けて飲んでいらっしゃる方が大勢おられます。どんな薬を飲んでいらっしゃるのか拝見すると、本当の眠り薬(睡眠薬という)だったり安定剤(不安やイライラを取り除く薬)だったりします。でも、お年寄りには眠り薬が本当に必要なのでしょうか?
加齢に伴って(だんだんに年を取ってくると)一日に必要な睡眠時間は徐々に短くなってくるとともに、一度に眠れる時間も短くなってきます。さらに眠りの深さもだんだんと浅くなり、ちょっとしたことで起きやすく(目覚めやすく)なってきます。また、人によっては、加齢(年を取るということ)に対して無意識のうちに不安をもつようになり、そういった無意識の中の問題(心因性という)が原因で浅い睡眠になってしまっている場合もあります。
こういったことで、若いときから比べると眠れなくなっていることはごく自然なことで病気でもなんでもないことなのですが、それが理解できずに「年をとっても若いときと同じように眠らなければ健康ではない。」「若いときと同じように眠れて当たり前なのだ。」と誤解されているお年寄りが非常に多くいらっしゃいます。そして「眠られない」とお医者さんに訴えると「不眠症]という病名がついて眠り薬が処方されるのです。
たまに、「ちょっと気なしでいたら今日の分が無くなってしまったので、眠り薬を売ってくれ。」と訪れるお年寄りがいらっしゃいますが、お使いになられている薬は法的規制がかかっているので処方せん無しにお売りすることはできません。そこで、何時に寝て何時に起きるのか尋ねると、「6時に寝て12時ころ起きてしまう。」とか「7時に寝て11時ころ起きてトイレに行ってまた寝ると3時ころ起きてもう寝られなくなってしまう。」というご返事。「申し訳ないが、薬は売れないので、今日だけ午後11時までがんばって起きていてもらって、それから寝床に入ってみてください。」とお願いしてみるとたいていは、「久しぶりによく眠れた。」となります。そんなものなんですね、実際は。
もちろんそういう工夫ですまない場合もありますが、本当に眠り薬が必要なのかどうか考えてみる必要はないでしょうか?
☆ 「早寝早起きは三文の得」は若い人だけ。高齢者は「遅寝早起き」が健康の元。