金属バンド修理その1レポート

平成25年6月1日(土)
by 店長(二級時計修理技能士 青木勝雄)

 近年、目に見えて時計金属バンドの修理が増えて参りました。中にはバンド交換しなければならない場合もございますが修理可能
なものもあります。そのうちの一つ、ネジ式のピンが紛失したものの修理をレポートします。
金属バンドがマイナスのピンネジで連結されている
タイプです。
右図の上の部品が、このバンドの他の駒部分から抜いたネジ。
下が加工に使用する予定の金属
材料です。
見本のネジと加工する金属棒

まず、見本ネジの寸法を計測します。学生時代「精密測定研究室」
に在籍していたスキルがここで生きます。
 今回のものは外寸が1.6ミリ、ネジ部径が1.2ミリでした。
見本ネジの計測

材料の外径は1.6ミリだったので、ネジを切る部分の径を1.2ミリ近
くまで、グラインダーで削ります。コツはテーパのつかないように水平に
削ることです。
ネジ部をネジ径よりやや太めに削る

荒削りした材料を万力に固定します。これから1.2ミリの雄ネジを
ダイスで切ります。
ネジ部を荒削りした材料を万力に固定

1.2ミリのダイスをダイス回しに固定します。
1.2ミリのダイスとダイス回し

ダイスで材料をゆっくりゆっくり切っていきます。あまり急に進むと
材料が折れるので、水前寺清子の365歩のマーチの要領で
「2回り進んで1回り戻る」といった感じでねじを切っていきます。
ネジが荒削り部分を進み終わったら終了です。
365歩のマーチの要領で

右図のように見本品と同じ長さのネジが切れました。
次は見本品と同じ長さにカットします。
見本ネジとねじ切り出来た材料

グラインダーカッターで切断

後にヤスリがけする長さだけ余分に、目印通りにカットします。
左図では見えていませんが、切る材料の右部分はヤットコで
抑えて飛んで行かないようにします。
切断面をヤスリで平面に削る
カットした面をダイヤモンドヤスリで平面にします。この後
マイナスネジの頭を作成するので重要な作業です。
いよいよ終盤の作業です。ここのコツは面の中心にマイナスの溝を
掘ることです。
目立てヤスリでマイナスネジ頭を作成します。

わかりにくいですが中央に溝が掘れました。
完成です。実際バンドに入れてみたところ、バンドの雌ネジが
浅いようで、それに応じて見本品よりネジ部を短くしました。
まとめ

以上の作業で代金は2500円です。一日間お預かりする必要があります。