エンジンパ−ツのWPC加工



 クルマのチュ−ニングの世界では、ミッションギア&シンクロやヘッド周りのパ−ツ・・・例えばバルブ、バルブリフタ、カムシャフトなどWPC加工はいまや定番と化しています。
 WPC加工というのは、超簡単に言ってしまうと、「素材に小さい鉄球の粒を当てて表面を鍛えてやる。同時に表面に小さなデコボコを付くってオイル溜まりを作ってやる」という2点の効果があります。つまり表面硬度を上げて摩擦や金属疲労による破壊を延命してやること(注:素材そのものの強度がない場合はどうしようもありません)、もうひとつは表面に目に見えないホントに小さなデコボコがオイル溜まりになることによって摺動性が向上するようになります。

 先日、2stのレ−スやカ−トの世界でもピストンリングなどのスモ−ルパ−ツのWPC加工はメジャ−になって来ている・・・とのお話が掲示板に出てきました。ここで私が興味を持ったのは、空冷EGのスク−タ−の場合、「WPC加工による摺動性の向上がボアアップKIT導入による焼きつき&抱きつき防止にならないか?」でした。そこで思いついたのは、高価なマロッシのボアアップKITをこの加工をすることで焼きつき防止に役立ってくれれば・・・と。そこでピストンリング、ピストンピン、ピストンの3点をWPC加工に依頼しました。




 これが依頼前のマロッシボアアップKIT。今回注目していただきたいのは
シリンダ上部に乗っかっているピストン。素材はアルミ製です。実際この写真
では磨かれたアルミの輝きがあります。ピストンリング、ピストンピンは袋の
中です(^^;)。あ、左にあるWJさんオリジナルのヘッドもチェックしてください。



 今回お願いしたのは神奈川県にあります「NE有限会社」さんです。 今回担当していただいたのは村田さんというお方です。HPでお分かりのようにクルマはもちろん、大型バイク、カ−トのノウハウもあり、今流行になっているゴルフクラブのチタンウッドのWPC加工も手がけています。
 スク−タ−の場合、カ−トの延長線かな?と思い、「50ccのスク−タ−なのだが68ccのボアアップを行う。発熱量が著しく増加するので焼き付き防止のためにWPC加工を行いたい」とオ−ダ−を出しましたら、「WPC加工よりも、より摺動性を重視したモリブデンショット加工という加工方法があります」とのことです。
 モリブデンショットとは、お話を伺うと「鉄球をショットするのではなく、二硫化モリブデンの粉末をショットすることによって素材の表面内部まで二硫化モリブデンが浸透拡散して長期に渡りフリクションの低下が見込める」とのコトです。WPCが表面硬度の強化プラス約20%UPの摺動性の向上に対し、モリブデンショット加工は表面硬度の強化は見込めないものの、約50%以上の摺動性の向上が見込めるようです。
 村田さんと相談した結果、確実に擦れるパ−ツ、今回はピストンリングとピストンピンはWPC加工を施し、ピストンに関しては、ピストン自体の強度は十分あるのでモリブデンショットでフリクションの低下を見込んでモリブデンショット加工、という形で一旦はお願いしました。が、その後、WPC加工をモリブデンショット加工は同時に処理できるとのことなので、ピストンピンとピストンリングはWPC+モリブデンショット加工のダブル加工という形にしました。ついでにヘッドもディンプルが形成されることでカ−ボンが付きにくくなることことなので、「どうせ頼むなら・・・」で一緒にお願いしました(これはWPC加工のみ)。




 これが処理後の部品です。モリブデンショットをを施したパ−ツは
見事なまでに「黒紫色」に変色しています(^^;)。これはモリブデン
の色が染み込んじゃっているようです。




 ピストン&ピストンリングのアップ図。ね、黒いでしょ(^^;)?
加工前の上の写真と見比べたら色の変化がわかると思います。ちなみ
にこのモリブデンショット加工、クルマのホンダフィットのエンジン、ピスト
ンスカ−ト部にこの加工法が純正採用されています大メ−カ−さんも採
用するということはちゃんと効用はあるってことでしょう。
 このモリブデン色ですが、どうも実際に使用し始めるとすぐにとはが
れるそうです。が、この表面の色がはがれても、内部にはしっかり浸透
しているので関係ないそうです。「エンジンパ−ツの特殊処理は違反」
などのレギュレ−ションがあるレ−スに参加されている方はむしろこの
色を消しゴムで消して組み付けるようです(^^;)。




 WJさんのヘッドのWPC加工後の表面。ディンプルができるから
なのでしょうね、表面は「ピカピカ」から「すりガラス」の表面って感じ
になりました。WPC加工の上にスズ拡散メッキをかけてあるそうで
す。忘れましたがピストンピンも同じように表面は若干「くすんだ」
感じになります。



 最後に費用ですが、正直忘れてしまったんです(^^;)。確か5000円しなかった記憶があります・・・「チャレンジしたいな」という方はNEさんに加工希望のパ−ツをデジカメで取って、見積もりを出されるのが一番的確だと思います。「こんな感じで使いたい」とかの何を求めているかで加工方法も的確にアドバイスを頂けるので。尚、エンジンパ−ツのみならずスク−タ−でしたらフロントフォ−クのインナ−チュ−ブやトランスミッションBOX内のギア、キャブの内壁やインマニなど、WPC加工のディンプル効果でいろいろな効用が見込まれるそうです。
 「WPC加工がどういったものか?もうちょっと詳しく知りたい」などの興味のある方は検索エンジンに「WPC加工」で検索すれば膨大のリンクがあると驚くかもしれません。それほどクルマの世界ではWPC加工はメジャ−な加工方法になっています。基本理念から勉強してみるのもいいと思いますよ。


20020418