オリジナル物語(原案です)
ここは美香山高校、ごく普通の男女共学の学校。
ごく普通の女子高生「柏木あずさ」はここに通っていた。
普通に遊びたいし恋もしたい、でもある日をきっかけに普通ってなんだろって
考え始めた。そしてある日とんでもない事を考えついてしまった。
「私、夏休み中、山でテント暮らしします…。」
7月、3年A組の教室、いつも通り
あずさは中学の時からの親友、里美の机に行き声を掛けた…。
「おっはよう〜さとみぃ」
「おはよう〜、今日も朝から暑いねぇ〜」
里美は体型が小柄で髪はセミロング、りぼんを頭の上のほうに付けていてスカートはひざ上3センチ。
とっても子供っぽくて制服を着ていないと小学生ぐらいに見えてしまう。
しばらく話しをしていると里美が思い出したように言った。
「そう言えばあずさ今日、日直じゃなかった?」
あずさはきょとんと考え込んだが
「あっ…。そうだった〜。」
「早く学級日誌、取りに行ったほうがいいよ」
そう里美が言うとあわてて教室から出ようとした。すると…。
「あっ。」
ずってんころりん。教室の出入り口で足をつまずいて転んでしまった。
その時の反動でスカートのすそがひらっ…。
「あずさ大丈夫?」
クラスのみんなが心配になってあつまってきた。
「あはは…、大丈夫だいじょーぶ。それよりあたしなんでこんな所で倒れているの?」
「・・・。」
クラスのみんなはあきれがお。
「ごめんねあずさ、私が急がせたから…。」
里美があずさに手を貸しながら言った。
「ううん。気にしないであたしったら毎日転んでいるから。」
「でも…。」
「里美が一番あたしの性格知っているでしょ。だから…ねっ。」
「うん…。」
あずさの顔を見ながら里美は思いました…。
『あずさと友達になれて本当によっかった…』
放課後…。
「さとみぃ〜、日直おわったよ〜」
あずさが昇降口で待っていた里美のところにやってきた。
「じゃ、帰ろう」
「うん、じゃあ今日はどこ寄ってくぅ?」
里美がにこにこしながら聞くと
「じゃぁ、たまには向日葵山公園に行ってみようか?」と言いました。
「あずさったらそんなところに行ってどうするの?」
「いいじゃない、たまには。あそこいくといっぱいひまわりが咲いているんだって。
だからその種をすこしもらってきたいと思って。」
あずさは里美の所を見ながら言いました。
「それじゃ行きますか?」
「うん、行こういこう♪」
そうして二人は向日葵山公園に行く事になりました。
「うわぁ〜、いっぱい咲いているね。」
「ほんと〜、こんなに咲いているとは思わなかった…。」
二人は公園のひまわりの大群にびっくりしてしまいました。
そのひまわりは全部2m以上、中に入ると迷子になってしまいそうなくらいでした。
それからその公園は公園といっても昔、地すべりがあったところを公園にしたところなので
半分以上は原っぱ、その3分の1以上にひまわりが咲いているのだからすごいはずである。
「風が吹いて気持ちがいいから、そこの芝生でお昼ねしましょうか?」
「さんせ〜い♪」
二人は芝生に横になりました。
青い空に白い雲、すずめが元気いっぱいに飛んでいきます。
二人は良い気持ちになって寝込んでしまいました。
数時間後…。
『あっ、となりに誰か座っている…。里美かな?それじゃぁとなりで寝ているのは…。』
夢の中でそう思ったあずさは薄目を開け、座っている人の顔をみました。
「うっわぁ!」
あずさはびっくりして飛び起き、その声で里美もびっくりして目がさめた。
「どうしたの〜あずさ!」
「ほらとなりに男の子が…。」
あずさがそう言うとその男の子が苦笑いしながら言いました。
「ごめん、ごめんおどろかしちゃった?あんまり気持ちよく寝てたもんだから…。」
その男の子の髪はスポーツ刈りでジャージを着ていた。身長はあずさと同じくらい。
横にはマウンテンバイクが置いてあってそのそばには大きなリュックサック。
「女の子の寝顔を見るなんて失礼だぞぉ!」
あずさが脹れっ面で言うと
「って言うかそんなところで寝ていれば死んでるんじゃないかってみんな見るぞ。」
って男の子。
「あっ、そうか〜。あはは…。」
「あずさ、納得してどうするの」
里美があきれ顔で言う。
「ははは…。二人とも漫才師?」
「私たち漫才師じゃありません!」
あずさと里美は同時に叫びました。
「あはは…。」
三人同時に笑い出しました。空に浮いている雲の上まで聞こえそうなくらい
大きな声で…。
「自己紹介してなかったね、あたし柏木あずさ。それとあたしの友達…」
「丹神里美です。」
「僕は麦畑明、この隣町に住んでいるんだ。」
「そうなんだ、でもなんでこんな大きなリュックサック持ってるの?」
あずさは不思議に思っていたことを聞いてみた。
「あ〜ぁ、これの事?」
「うん!」
あずさはうなずいた。
「これはこれからの着替えや食料。水やなべも入っているけど…。」
「えっ、明くん家なくなっちゃたの?」
あずさはびっくりした顔で言った。里美もとってもおどろいている。
「そうじゃなくて、これからこの自転車で旅に出るの。もちろん夏休み中だけだけど。」
「そうなんだ、すごいね♪」
あずさと里美は感心した顔で明のところを見た、すると明はちょっと顔を赤くした。
「でも大変じゃない?食事の準備をしたり、雨の日なんて…。」
里美は興味深そうに聞いた。
「大丈夫、だいじょうぶだって僕の場合はこの山でテント張って過ごすの。
自転車で移動するって言ったってここで終点。」
「じゃぁ、この自転車いらないんじゃ…。」
「本当のこと言うと…。ただのお守り♪」
「ぷっ。あはは…。」
また三人同時に笑いはじめた。
「これが夢だったんだ。小さい頃からの…。」
「なんでこんなのが夢なの?」
あずさは聞いた。すると明はリュックサックから1枚の写真を取り出しあずさたち見せた。
「この人誰?」
「近所の兄ちゃん。今はここにはいないけど…。この人がきっかけなんだ。テント暮らしが好きでいつも会うたびその話をしてくれた。」
「そうなんだぁ〜、でもこのお兄ちゃんは?」
「僕が5歳の時交通事故で天国に行っちゃった…。」
明がその写真を見ながら悲しそうに言った。
「思い出させちゃってごめんね。」
あずさが言うと
「気にしないで。この兄ちゃんおかげでこんなおもしろい事ができるんだから
感謝してるんだ。でも本当は兄ちゃんと一緒に来たかったな〜。」
「そのお兄ちゃんはいつも明くんのそばにいると思うよ。」
あずさが写真を見ながら言いました。
「そうだよぉ。だから私たちに出会えたんじゃない。」
里美も明の顔をみながら言いました。
「そうだね。柏木さん、丹神さんありがとう…。」
明は空の遠くの方をみながら言いました。
「それから〜、名前の呼び方、あずさでいいよ。」
「私も〜里美でいいよ。」
二人はにこにこしながら言いました。
「うん、わかった。あずさ、里美。」
「それでよし!だね♪」
「あはは…。」
また3人同時に笑い出しました。
「あっ、もう暗くなってきたね。あずさもうそろそろ帰ろうか?」
「そうだね。明君じゃあね。また来るね。」
「バイば〜い」
あずさたちは立ち上がり明に手を振りました。
「うん。待ってるから〜。」
明も手を振りました。
夕焼けの空の下あずさの心の中に何かあたたかい物が芽生え始めました。
〜第2話へつづく〜