創作物語「創作な彼女」第1回目



「お兄ちゃん。お願い、一緒にシャンプー買いに行こう」
俺はいきなり部屋に入ってきた妹にため息をついた。
「お前なあ、ノックしろって言っただろ」
「ごめぇん、良いでしょ家族なんだから、お兄ちゃん。それとも私に言えない事でもしていたの?」
舌を出しながら含み笑いをしながら妹が言う。
「そっ、そんなことある訳無いだろうっ。いくら家族だってプライバシーと言うものが・・・」
「ふふふ、分かったからっ。ほら私と一緒に出かけようっ」
俺の右手を引っ張る妹。そんな妹にコロリとやられた俺。
「仕方ないなっ。じゃあ行くか」
少し頬を赤くした妹。俺も少し顔が熱くなった。


「ふふふ、お兄ちゃんとお出掛け、楽しいねっ」
「いつも学園に登校するときは一緒だろっ」
「そういうんのじゃなくて・・・ねっ。こうやってだたお兄ちゃんと
お出掛けするのっ」
妹の顔がかわいい。そんなこと何時だって考えたこと無いのに。
俺、どうかしてる。
近くのスーパーまでの手前の信号。
そこで顔知る女の子に出会った。
「浩介くん〜」
俺たちにニコニコ微笑みながら手を振る女の子。
その娘は俺の年上の幼なじみ『美咲』だった。
信号が変わると同時に俺たちの前にやってきた。
「浩介君、菜奈美ちゃんとお買い物?」
「いや〜そんなものかな?」
そんな風に俺たちが話している間、妹は俺の背中に隠れていた。
そして美咲をにらんだような気がした。
俺の気のせいだろうか?
「兄妹、仲がいいのね」
そう話す美咲と俺の前に両手を伸ばして俺たちを離れさせようとした。
「お兄ちゃんは、私の大事な人なのっ。誰にも渡さないんだからっ」
そう言う妹はなぜか泣いていた。






「おっ、修羅場ねっ」
「おうっ、いきなり声を掛けるな」
パソコンに向かっていた俺にいきなり声を掛ける『彼女』
この人は同人のBL物の作家で俺の家の同居人だ。
なぜ俺たちが彼氏、彼女の関係になったかは話してもつまらないだろう。
でもそれは他人にはつまらないことでも俺には大事な思い出だ。
俺たちが出会ったきっかけは機会があれば話したい。
いや、機会があればの話だが。

俺は美少女物のライトノベル作家。
お互い売れない同人作家同士仲良く暮らしている。
BLと美少女物は某ライトノベルでも言っているように
東池袋と秋葉原の見えない壁だ。
でも俺たちは何かで繋がっている。
それは『創作』と言う何かだ。

「これ次回出す本用のやつ?」
「いや、これは某ノベル雑誌に投稿する原稿で・・・」
「でもこれぶっちゃけ某エロゲに影響されて無い?」
ニヤニヤしながら言う彼女。
「そりゃ〜習うは真似る、だからな。ってなんでお前エロゲのあらすじ知ってるの?
お前エロゲは嫌いだって言ったじゃん」
あわてながら言う俺に彼女は
「私エロゲは好きじゃないけど嫌いだとは言って無いじゃん。
それに私は創作に好きも嫌いも無いのっ」
納得できるような出来ないような物言いに俺は何も言い返せなかった。

「ふふふ、私に創作で知らないことは無いの。
私は文章が好きなんだからっ」
ニコニコしながら言う彼女の俺は顔はふと赤くなった。




〜つづく〜
(作 2011山中ぶどう)

戻りますっ