クリスマス短編物語原案書2002/12/03→2002/12/9公開
サンタクリスマス
「あっ!雪だぁ〜。今年はホワイトクリスマスだね。何か良いことありそうだな・・・」
ケーキ屋さんの店先から出るとちらちらと降りだした雪。
お母さんから頼まれたクリスマスケーキを抱いて未雪はうれしそうに言いました。
「おっとあぶないあぶない、つぶれちゃう」
慌ててケーキを抱くのをやめて右手で持ち雪の舞う空を見上げました。
『あたしは松山未雪、中学1年生。毎年この時期が楽しみです。
何でかって?それはクリスマスが来ればサンタさんに会えるかもしれないから・・・』
「寄り道して帰ろうかな?」
曲がり角に差し掛かって未雪がふと思いつきました。
「ちょっとぐらい遅くなっても大丈夫だよね」
未雪は家の方とは反対側のほうに歩いていきました。
ちょっと肌寒い風。でも手袋とマフラーがあるからそんなに寒く感じない。
何かの期待に心わくわくでした。
公園にさしかかると若い女の人の声が聞こえてきました。
「う〜ん分からないな〜。この地図もうちょっと親切に書いてくれれば良いのに〜」
未雪は気になって公園の中に入っていきました。
公園のベンチには女の人が一人で座っていました。
横に目をやると荷札がついた白い袋がぽつんと置いてありました。
「う〜ん・・・」
「どこかに行かれるのですか?」
未雪が声をかけると
「ははは・・・道に迷っちゃって」
苦笑いしながらその女の人が言いました。
・・・・・・。
少しの間の後未雪を見て少し表情を変えて
「あなた私のことが見えるの?」
びっくりした感じでその女の人が言いました。
「はい」
未雪が返事をすると女の人が言いました。
「じゃあ、私は何に見える?」
「道に迷ったお姉さん・・・じゃないんですか?」
未雪がやや困った顔で言うと
「うふぅ・・・道に迷ったお姉さん?間違えじゃないんだけどね」
その女の人は必死に笑いをこらえながら言うと
「何がおかしいんですか〜?」
未雪がちょっと不機嫌そうな顔で言いました。
「あっごめんごめん。私は三田佳苗って言うの」
「さんたかなえさん?」
「そう、佳苗でいいよ。こっちに来て一緒に座らない?」
佳苗が手招きをして未雪をベンチに座らせました。
「あっそういえばあなたの名前聞いてなかったね」
「あたし松山未雪って言います。中学1年生です」
「そうか未雪ちゃんって言うんだ〜。かわいい名前だね」
「そうかな〜」
未雪はそう言われると顔をぽっと赤くさせました。
「うん。その長い髪も似合ってる。私も伸ばしたいな〜髪の毛」
佳苗は未雪の肩の下のあたりまでかかった髪の毛を見て言いました。
「髪の毛伸ばさないんですか?」
「うん〜ほんとは伸ばしたいけど私サンタクロースだから」
「えぇ〜」
未雪は目をまん丸くしました。
「サンタクロースってあのクリスマスに子供たちにプレゼント配ったりする
あのサンタクロース?」
「そうだよ。って言ってもこの服見て気づかなかった?」
未雪はもう一度佳苗をよく見てみました。
「ほんとだ〜サンタクロースの服だぁ〜。でも下スカートだよ?」
「こういうサンタ服もあるんだよ」
佳苗が立ち上がりくるりって一回転して見せました。
「かわいい〜」
「ありがとう。でも何であなたには私の姿が見えたのかしら?
普通の人には私の姿は見えないはずなんだけど」
佳苗が少し考え込みました。
「あたし変なんですか?」
未雪が心配そうに聞きました。すると佳苗が横に首を振りながら
「変じゃないよ。むしろ大歓迎だよ。私みたいな方向音痴なサンタにとっては」
にっこり笑顔。
「でも何でサンタさんは髪の毛伸ばせないんですか?」
未雪が不思議そうに聞きました。
「それはね・・・髪の毛が長いと上手く走れなくなるからだと思う・・・
でも私にも分からないんだぁ」
「じゃあ後ろで縛ってポニーテールにしてみたら?
佳苗さんだったらきっと似合うと思うよ」
未雪がそう言うと
「それも良いかもしれないね。未雪ちゃんナイス」
佳苗が大喜びで跳ね回ってぱんつ丸見え。
「佳苗さん見えてます」
未雪がそう言うと佳苗はスカートのすそを押さえて
「ちょっとはしゃぎすぎたかな?」
少し苦笑い。すると二人の中から自然に笑いがこぼれてきました。
「今日のプレゼント配り15件どの家か分からなくて・・・。今晩一緒に手伝ってくれない」
佳苗が未雪に聞きました。
「あたしも一緒に行っても良いんですか?」
「私も一緒に行ってくれれば助かるんだけど・・・」
「行きます行きます♪」
未雪がベンチから飛び上がって喜んでいます。
「そんなにうれしい?」
「はい!小さいころからの夢でしたから。サンタさんと一緒にお話するんだって」
「そうなんだ・・・」
佳苗は未雪が喜ぶ姿を見てとってもうれしく思っていました。
「じゃあ未雪ちゃんにもサンタ服貸してあげる。サイズは?」
「130センチです」
「じゃあサンタ村まで取りに行ってくるからここの公園に11時に集合ね。
あと家族と一緒にクリスマスを楽しんでから来てね」
「はい!」
未雪は元気よく返事して立ち上がりケーキを持って家まで走っていきました。
「転ばないようにね〜」
佳苗はその姿を見送って姿が見えなくなると笛を吹いてトナカイのそりを呼び
サンタの村まで戻って行きました。
「サンタさんとお話できたんだ〜」
未雪は11時まで心わくわくでした。
そして11時、家からこっそり出てきた未雪が公園にやってきました。
「お待たせしました〜待ちましたか?」
未雪が言うと横に首を振って
「うんん、今村から着いたところだよ」
佳苗はにこっと微笑みました。
そしてきちんとたたんだ服を未雪に渡しました。
「じゃあこれがサンタ服。どこで着替えれば良いかな〜」
「そこの木の陰で着替えてきます」
未雪がにこっと微笑むと木の陰に入っていきました。
「似合うかな?あたしこんな短いスカート着たことないけど」
未雪が着替え終わって出てきました。
「わぁ〜私よりよく似合っているじゃん」
サンタ服に身を包んだ未雪を見て佳苗が歓声をあげました。
「ほんと〜?」
未雪が佳苗に聞きなおすと
「ほんとだよ」ってにこってしました。
未雪はすごくうれしく思いました。
「じゃ配りに出発しますか?」
「は〜い」
二人はそりに乗って出発しました。
「そりってほんとに飛ぶんですね」
未雪が下を見下ろしながら言いました。
目の下にはきれいな夜景がめいっぱい広がっていました。
「未雪ちゃん地図見てくれる?」
「はい♪」
未雪は受け取った地図を見ながら佳苗に指示を出して一件目の家に到着しました。
がらがらがら〜。
「静か〜に入ってね」
未雪たちは部屋に入って行きました。
その部屋には5歳ぐらいの女の子がベットに寝ていました。
「メリークリスマス」
佳苗が小声で言いながらきれいにラッピングされたくまのぬいぐるみを枕もとに置きました。
「メリークリスマス」
未雪も小声で言いました。
「寝顔かわいいですね」
未雪がそう言うと
「そうだねその笑顔が毎年の楽しみかもしれないね」
と佳苗が言いました。
「そうなんだ〜」
未雪はすごく感心しました。
「じゃ次行こうか」
「はい!」
そのあとも二人はプレゼントを配って15件全部配り終わってもとの公園に戻ってきました。
「今日はありがとう。たすかったよ〜」
未雪に抱きついて佳苗は言いました。
「いいえこちらこそ貴重な体験ありがとうございました」
未雪もにこっと笑顔で言いました。
「じゃ今日のお礼しないとね」
佳苗がウインクしながら言いました。
「お礼だなんてそんなぁ〜いいですよ」
「う〜んんもらっといて」
佳苗は未雪に小さな紙袋を手渡しました。
「開けていい?」
「そうぞ」
未雪が紙袋を開いてみました。するとさくらの絵柄のブローチが入っていました。
「好きな人に告白するときのお守り。あなた好きな男の子いるでしょう?」
「えっ、何でわかるんですか」
未雪がびっくりした顔で言いました。
「それはねこういう伝説があるの。女の子が恋をしている中学1年のクリスマス。
その時、一生に一度だけ私みたいなサンタクロースと会えることができるの」
「恋をしている女の子?」
未雪が聞きなおしました。
「そう、それも片思いのね。でも会える人って本当に限られてるの、だから
未雪ちゃんとあと一人の二人だけ」
「二人だけ?」
「そう、その一人の伝説を聞いて私もそういう女の子にめぐり合ってみたいな〜って
思っていたの。だからあなたも好きな人がいるんじゃないかと思って」
未雪は佳苗の顔を見ました。
「うん、あたし好きな人がいます」
「そうなんだ〜じゃこのお守り持ってがんばってね」
「はい」
未雪はそのお守りを握り締めながら言いました。
「それからそのサンタ服もプレゼントするからね」
「ほんとに良いんですか?」
「もちろん」
佳苗がウインク。
「ありがとうございます。わぁ〜い」
未雪は公園をはしゃぎながら飛び跳ねました。
「未雪ちゃん私みたいに見えちゃうよ。ぱ・ん・つ」
佳苗が意地悪そうに言うと未雪が慌ててスカートのすそを押さえました。
「ははは・・・」
「うんも〜あははは・・・」
未雪と佳苗の声がそら一杯に響きました。
「じゃあお別れだね」
佳苗がそりに乗り込みました。
「もう会えないんですか?」
未雪が泣きそうな顔で言います
「う〜んたぶん。でもまた会えるかもしれないよ今日みたいなホワイトクリスマスに
だから泣かないで笑顔でお別れしよう・・・ねぇ」
佳苗が未雪の頭をなでなでしました。
「うん!」
未雪が手で涙をぬぐいながら言いました。
「じゃ告白がんばってね」
佳苗がカッズポーズ。
「はい♪」
佳苗のそりが動き出しました。
「じゃ〜ね〜さようなら」
佳苗が片手で手を振りながら言いました。
「さよなら〜また絶対会おうね〜」
未雪は両手一杯に手を振っています。
「さよ〜なら〜」
未雪は佳苗のそりが見えなくなるまでずっと手を振っていました。
それからある日。
あの時佳苗からもらったブローチを握り締めて・・・。
未雪は好きな男の子に告白しました。
「あの〜」
「なに未雪ちゃん?急にあらたまっちゃって」
「あのね、あたしあなたのことが・・・」
〜おわり〜
2002年山中ぶどう(「ぶどうだいありーほーむぺーじ」)