嶋ア 久美子
2010年3月14日、日本青年館502会議室に、北は岩手、南は熊本から、婚外子差別撤廃を求める50名の人々が集まりました。 住民票続柄裁判から交流会を支えてくださっている福島みずほ大臣の講演を中心に、会場に集まった人々が熱い思いを語り合いました。集会後の懇親会にも
23名が参加。婚外子として、あるいは婚外子を持つ親として生きてきた(これから生きていく)人生は、辛いことがあっても間違っていなかったと再確認した
一日でした。
主催者挨拶 田中須美子さん
出発から現在までの闘いの経過をお話しします。
@ 37年前に福喜多さんと同居を始めたとき、「非婚で共同生活をする」と決めた。『嫁』や「家」なるものそして一方の氏を放棄させる婚姻制度に疑問を感じた
から。
A 85年に子どもが生まれたとき、出生届の嫡出か否かという差別記載を拒否し、窓口闘争を行った。その結果、無記入のまま付箋処理もなく受理された。
B 住民票の続柄が婚内子と区別され差別記載されていることに対し、行政と闘った。
C 社会新報に載った福島みずほさんの紹介記事を見て、非婚で共同生活し子どもを育てていることを知り、福島さんに代理人をぜひにとお願いし、住民票の続柄差
別記載に対 し裁判に訴えた。1991年一審の東京地裁では敗訴したが、年を追うごとに全国的に 婚外子差別は不当だとの声が大きくなっていった。国連の
規約人権委員会にも訴え、そ の結果日本政府に婚外子差別撤廃の勧告が出された。このような中で1994年12月 15日自治省の通達が出て、1995年
3月からすべての子につき住民票の続柄が『子』 と変わった。画期的な日だった。
D それでも戸籍の続柄は変わらなかったので、これについても引き続き裁判闘争を行った。2004年3月2日東京地裁は、婚外子に対する戸籍の続柄差別記載は
プライバシ ーの侵害だと認めた。2004年11月1日以降に出生届が出されると、すべて『長女 ・長男』と記載されることとなった。
E すでに戸籍の続柄が『女・男』と記載されている人については、本人や母からの「更正・再製」申出により、「長女・長男」に変えることができるようになっ
た。しかし自治体の窓口では差別をなくす視点で職員が対応せず、説明不十分なため差別撤廃とは逆の方向になっている。このためこれらを改善するよう法務省
と交渉を行ってきた。
また、このような申出による変更ではなく、戸籍の続柄の変更は国が責任をもって職 権で行うべきであると繰り返し要求してきたし、「長女・長男」とい う続柄をなくすよう求めてきた。
F 今、出生届の差別記載の問題に取り組んでいる。これまで何度も法務省と交渉し、ようやく昨年11月、その他欄に「子は母の氏を称する」「子は母の戸籍に入
る」と書け ばよいとの回答を得た。
私たちが闘いを初めて22年、法制審答申から14年です。民主党政権になり、千葉さんが法務大臣となり福島さんが男女共同参画担当大臣になった今が、
婚外子差別撤廃のチャンスです。このため差別撤廃に向け国会請願署名行動を展開しています。 今後もよろしくお願いします。
講演:福島みずほさん (男女共同参画大臣)
1、こんにちは、福島みずほです
田中さんから、コンパクトにまとまったお話がありました。22年間という長い間、地道に民法改正・婚外子差別撤廃に取り組んでいることに心から敬意を表
し、連帯の挨拶をします。私自身も思いを込めて、この裁判の意味・婚外子差別撤廃の意味についてお話ししたいと思います。
また、私は今、男女共同参画・子育て支援・消費者担当大臣をやっています。せっかくなので、国会の中・内閣の中で民法改正どうなのよ、あるいは男女共同
参画担当大臣としてどういうことに取り組んでいるか、これは民法改正に直結しているので、その話もさせてください。
2. 続柄裁判の経過
J 住民票の続柄 すべて『子』に
お二人から依頼を受けた当時思っていたのは、表記上の差別があることが差別の根本になり、差別を引き起こすということ。これは問うことのできる裁判だと
思った。
裁判の過程の中で、多くの行政交渉を行ってきた。自治省との交渉で、「すべての子の続柄を『長男・長女』でなく『子』とすることでどんな支障があるか調
べてほしい」と言った。そこで自治省の役人が調べた結果、『子』にしても何の支障もないことがわかった。 これがきっかけで、1994年通達が出て、住民
票の続柄がすべて『子』に統一された。通達が出たため、東京高裁判決は請求棄却となった(田中さんたちは棄却に対し激怒していました!)が、裁判所が住民
票の続柄差別はプライバシーの侵害であることを明言した。『子』に変わったのが私のささやかな成功体験で、法律や制度は変わるんだ、みんなでがんばれば 変わるんだ、と思えて嬉しかった。
K 戸籍の続柄も変わった
私たちは「差別のない記載にしてほしい」と求めたので、本当はすべて『男・女』になれば良かった。ところが『長男・長女』で、「本人の申出による」と
なってしまった。法務省と交渉を重ねたが、婚外子本人が「自分の続柄を変えてくれ」と地元の役所に行くことは大変なんだ、ということが伝わらなかった。
しかし、何にも変わらなかった訳ではない。出生届の差別記載についても、粘り強い交渉により前進してきた。
3. 民法改正と婚外子差別
J 国会・内閣の状況
国際人権規約B規約・子どもの権利に関する条約・女性差別撤廃条約の総括所見の中で、民法改正とりわけ婚外子差別を撤廃しろと、ずっと勧告を受けてい
る。 しかし、国会で民法改正は実現していない。
官房長官主催で総理も出席する「男女共同参画会議」では民法改正やりましょうという確認をしている。
しかし閣議決定できないのは、閣僚の中に反対してい る方がいるから。今年は7月に参院選があるので、逆算すると5月末が閣議決定のタイムリミットなのだ。
大きなネックはあるが、今がチャンスであることは間違いない。というのは 、
@ 千葉法相も私も民法改正を最優先課題にしている。
A この5月には、子どもの権利に関する条約の日本政府の報告書が審査される予定である。
また、昨年、女性差別撤廃条約の最終見解で民法改正について2年以内にフォローアップするように言われている。来年は報告しなければいけないので、民
法改正は最優先 課題であるはずだ。
B 今まで野党のときは議員立法で民法改正を出したが、少数だから通らなかった。今は、政府提案立法として出そうとしている。与党が圧倒的多数なのだから、閣
議決定して出せば必ず通る。
今国会で何とか実現したいと思っている。
K 婚外子について思うこと
熊本県で赤ん坊を迎え入れることで話題になった「こうのとりのゆりかご」の報告書を、先日読んだ。親が子どもを手放さなければならない事情の中で、婚外
子差別が歴然とあることがうかがえる。変わってはきているが、差別の根深さを改めて強く思った。
今年フランスに行って保育園等を見てきた。出生率のために政治をやっている訳ではないが、日本の出生率1.37に対し、フランスは2.02である。これ
は、ひとつには、子育て支援に7兆円の予算があること。もうひとつには、パックス法が大きいと思う。事実婚に関する法律があって、女の人のライフスタイル
をギチギチしばっていないので、女性がしんどい社会でないことが大きいと思った。子どもの半分が婚外子だが、子育てしやすいというのは婚外子も育てやすい
のだ。
4. 男女共同参画担当大臣として
J 人権条約の選択議定書の批准
今、民法改正とともに、選択議定書の批准に力を入れている。 選択議定書とは、国内で例えば最高裁まで争ったが権利救済されなかったとき、国連の女性差別撤廃委員会に申立てできる、というものだ。女性差別撤廃条約
の選択批准書は、99カ国がすでに批准している。
これが批准されれば、法定相続分差別を国連に訴えたら、100%勝つ。 民法改正より選択議定書の批准の方が作業は遅れているが、状況は良くなっているので、来年の通常国会には出したい。
K 男女共同参画に向けた施策
@ 「女性差別撤廃条約推進チーム」の発足 女性差別撤廃条約の総括所見を履行するために作った。 各役所に書面の問い合わせやヒアリングをしている。たとえば文科省には、教科書の中の女性差別を洗い出すよう依頼している
A 第3次男女共同参画基本計画の作成 すべての人に男女共同参画は自分の問題と思ってもらうとともに、貧困など困難を抱える女性たちにどう手を差し伸べるかを盛り込んでいきたい。
B花より団子政策 たとえば、企業が女性の雇用率を上げると入札で優遇される なぜ女性が困難かは分析できているが、未だに最初の妊娠で7割の女性が退職する。
男女共同参画に実効性を持たせることを考えていかなければならない。
内閣府の私の担当のところで、ひとつ新しいことを始めた。ワークライフバランスや 男女共同参画で公共調達(業務委託)をする入札のときに、女性の雇
用率や労働時間縮 減について取り組んでいることを、業者選定の評価項目の総合加点理由にする(優遇する)ものである。今は公共調達だけだが、公共事業 にも広げていきたい。これにより、企業の働き方が変わると確信している。
政府ではこれが初めてだが、自治体では行っていて、成果を上げている。
5.最後に
民法改正は悲願です。今が、大きな流れの中で正念場にきています。 閣議の中で、内閣の中で、国会の中で頑張っていきます。一緒に頑張りましょう。
講演の後、質疑応答や感想を語り合いました。最後に福島さんから、「時間と場所と思いを共有してくださり、ありがとうございます」との発言があり、集会
は終了しました。
感 想
一口に22年間と言っても、気が遠くなるほど長い時間です。 交流会のすごいところは、その22年間ずっと活動が続いている事、そして毎回新しい方が参加してくださることです。
この会の存在が、全国の婚外子差別に悩んでいる方々の心の支えになっていると、いつも感じます。この日も会場からの発言を聞いて、改めてそれを強く感 じました。
会場に集まった皆さん、参加したかったけれど残念ながら参加できなかった皆さん、皆さんと共有した「思い」を、ありがとうございました。
(Voice2010, 3−5月号より)