婚外子相続差別 最高裁、大法廷へ回付 (2010,7/7付け)
<違憲判断の可能性大か?>


“婚外子相続差別、最高裁、大法廷へ回付”のニュースが、2010年7月9日にインターネットで流され、翌10日の新聞各紙で、一斉に報道されました。突 然のニュースに驚くとともになんだかわくわくしてきました。
 婚外子差別の撤廃について今回こそはの期待も大きく、全国から毎日届く署名をもって請願行動に力を注いできただけに、婚外子差別撤廃が先の通常国会で実 現できず、法案すら国会に提出されなかったことに少々落胆していました。今後どのような運動をして実現を図っていけば良いか、と考えている最中でした。
それだけに、この“大法廷へ回付”のニュースに、もしやもしやとの思いがわいて、気持ちが高揚してきたのでした。

<審理を大法廷に回付する場合とは>  
婚外子への相続差別規定は憲法違反と訴えた特別抗告の家事審判が、最高裁第3小法廷に係属となり、7月7日付で第3小法廷はこの審理を大法廷に回付しま した。
 裁判所法と最高裁判所裁判事務処理規則では、大法廷への回付について、どのような場合に審理を小法廷から大法廷に回付しなければならないかを、規定して います。回付出来る、ということではなく、“回付しなければならない”との規定です。  
それによると、@新たな憲法判断の必要がある場合、A判例変更の必要がある場合、B小法廷の裁判官の意見が同数で分れた場合、C大法廷で裁判することを 相当と認めた場合です。  

 <二度目の大法廷であっても、違憲決定が出されるとは限らない>  
大法廷へ回付とのニュースを知った時、嬉しさと同時にあの1995年の最高裁相続差別合憲決定のことが思い出されました。あの時も、大法廷に回付された のだから必ず違憲決定が出されるだろうと、皆そう期待していましたが、その期待が見事に裏切られてしまいました。  今回は相続差別についての二度目の大法廷だから、あのようなことにはならない、必ず違憲判断が出される、ということになるでしょうか。  小法廷が判例変更の必要があるとして、審理を大法廷に回付しても、大法廷の裁判官8人以上が違憲と判断しない限り、違憲の決定がでません。選挙の定数訴 訟では、同じ論点で何度も大法廷が開かれていますが、くりかえし合憲決定が出されている(時々違憲判決が出されているがそれは例外的なもの)のが現状で す。  そのため今回二度目の合憲決定の可能性もあり、こころして対処しなければと思います。

<それでも、違憲決定の可能性大か>  
ただ、今回大法廷に回付されたということは、違憲決定の可能性もあるということで間違いないのだと思います。  
15年前の1995年の時とは、とりまく状況が大きく変わっています。結婚−離婚−非婚での共同生活、あるいは非婚でのシングルマザ−など多様な家族形 態がさらに増え、婚外子出生率も95年の1.2%から08年の2.1%になりました。国連人権機関からも、95年以降婚外子差別の撤廃が繰り返し勧告され ています。ドイツもフランスも婚外子差別が撤廃されました。これらの国内外の婚外子差別撤廃をとりまく状況の変化を受けて、一昨年の2008年には国籍法 の婚外子差別は憲法違反であるとの判決が、最高裁で出されています。
このような状況の変化の中で迎える今回の大法廷での審理です。違憲決定が出される可能性は大きいのではないでしょうか。国際的にも注目される判断だと思 います。

 <最高裁は、今度こそは国会に託すことなく自力で解決を(違憲決定を)>  
1995年の大法廷の決定の中で、15人中5人の裁判官が違憲とし、4人の裁判官は国会での法改正の必要性を指摘しました。しかしこの4人の裁判官が他 力本願ではなく、もう少し勇気を持って違憲と判断すれば、あの時違憲決定になったのです。でも国会に託したばかりに、結局15年経っても国会で法改正され ることはありませんでした。もはや今回は国会に託すなどという愚はしてはならないと思います。  
“相続差別は違憲”との決定を、今回こそは最高裁が出してほしいと切に願います。 <違憲決定を手繰り寄せるために!> −家族形態が変化していることをアピールしていきたい−  違憲の可能性ありを、“憲法違反の決定”に手繰り寄せたい、そう思います。そのために何ができるのか。まずは、家族の形態が変わってきているという実例 をアピ−ルし、社会に(ひいては最高裁に)訴えていくという方法も一つの方法ではないかと思います。  
離婚−事実婚、離婚−非婚、非婚−婚姻等(それぞれに子どもがいる)の例をご存じでしたら、ぜひお知らせいただけませんでしょうか。   (田中須美 子)             


最高裁判所の裁判官
     

最高裁判所長官         竹ア 博允(第二)      
最高裁判所判事         宮川 光治(第一) 
                櫻井 龍子(第一) 
                金築 誠志(第一)        
                横田 尤孝(第一) 
                白木 勇 (第一)        
                古田 佑紀(第二) 
                竹内 行夫(第二) 
                須藤 正彦(第二)        
                千葉 勝美(第二)        
                那須 弘平(第三) 
                田原 睦夫(第三) 
                近藤 崇晴(第三)        
                岡部 喜代子(第三)
                大谷 剛彦(第三)                  

*上記( )内は所属する小法廷                     

(Voice2010,6−8月号より)