原告より

 

裁判終結…でも闘い続けます

 

菅原 和之

 

 4月17日、最高裁第2小法定で「つくれ住民票」裁判の判決がありました。結果は、4人の裁判官中3対1の多数意見で、私た ち一審原告が求めた「出生届未済のまま住民票作成の命令を」という訴えは退けられました。大変残念な結果です。これまでのご支援、ご注目に心より感謝する とともに、期待に添えるだけの判決を導き出せなかった私たち一審原告の力不足を申し訳なく思います。

 しかし、最高裁判決は一昨年11月の東京高裁判決に比べれば、今後の交渉に使える部分もある判決だと思っています。

 多数意見は「(住民基本台帳)法及び(施行)令は、当該市町村に住所を有するすべての者について住民票を記載して、住民に関 する事務処理の基礎とすることを制度の基本としていることが明らかである。このことは、出生届が受理されず、戸籍の記載がされていない子についても変わり はない」と述べ、「仮に区長において、上告人子につき…住民票の記載をしたとしても、法の趣旨に反する措置ということはでき(ない)」としています。しか しながら、今回の住民票不記載処分については「適式な出生届を(信条に基づいて)提出を怠っている(のだから、)…出生届の提出をけ怠していることにやむ を得ない合理的な理由があるということはできず、…区長が(住民票の職権記載のような)措置を講じていないことが、…法の趣旨に反するということはできな い。」としました。「また、住民票の記載がされないことによって…子に看過しがたい不利益が生ずる可能性があるような場合は、たとえ…(出生届の提出の) け怠にやむを得ない合理的な理由がないときであっても、…区長が職権調査による方法で、…住民票の記載をしなければならないこともあり得ると解されるとこ ろではある。しかし…住民票の記載を欠くことに伴う最大の不利益ともいうべき選挙人名簿への被登録資格を欠くことになるという点に関しては、その年齢から して、いまだその不利益が現実化しているものではなく…看過しがたい不利益が現に生じているような事情はうかがわれない。」とも述べました。

 多数意見への一審原告側からの批判の第1は、「嫡出でない子」なる差別用語を拒否したことを「その信条に基づくもの」として 「やむを得ない合理的な理由があるということはでき」ないとしたことです。昨年10月30日に出された国連自由人権規約委員会の勧告は「…出生の届書で子 どもが『嫡出』であるか否かを記載しなければならないと規定する戸籍法第49条を含む、婚外子に対し差別しているいかなる条項も法律から削除すべきであ る。」と、出生届における「嫡出」であるか否かの記載を強制する制度は、国際規約に違反すると言うことを明確に述べています。国際規約違反である「嫡出で ない子」なる表記の拒否を「その信条に基づくもの」として理由がないとした多数意見は、この判決自体が国際条約に違反してしまったと言わざるを得えませ ん。この点は、少数意見も同じことが言えます。

 次に「看過しがたい不利益が現に生じているような事情はうかがわれない。」という点ですが、先だって郵送されてきた定額給付 金の案内通知に記載された支給対象者の中に、当該子の名前はありませんでした。定額給付金についての政策的是非はさておき、住民票がないことによる具体的 不利益はこのように次々と押し寄せてきます。この点は、裁判長である今井功裁判官の少数意見が「住民票に記載されないことによって、行政上のサービスを受 けることができなかったり、たとえサービスを受けることができたとしても、住民票の記載がある場合に比較して、煩雑な手続を要するなど多くの不利益を受け ることは明らかである。」と述べている通りです。

 前述の通り、少数意見も「適式な出生届を提出しないことは許容されない。」と述べるなど、婚外子差別撤廃にむけた方向性とは 逆の立場であり、残念至極です。ただ、少数意見の優れている部分は、「(戸籍と住民票の)両者は本来それぞれ独立の目的を持つ別個の制度である。」と明言 し、「市町村長の側で(出生届が未提出であることを)理由として住民票の記載を拒否することは、…別個の制度である戸籍と住民基本台帳とを混同するもので あって、…住基法の趣旨に反し、違法というべきである。」と断じたことです。これは私たち一審原告らの主張に沿った意見であり、裁判長がこのような表明を してくださったことには敬意を表したいと思います。それと同時に、このあたりまえの意見が、多数を占めなかったという司法最高機関の現状については、あら ためて危機感を持たざるを得ません。

 私たちは結果的に敗訴しましたが、住民票作成の可能性は、高裁判決の後よりも、今回の最高裁判決を受けた現在の方が、高まっ ているといえるでしょう。今回の最高裁判決を最大限活用して、世田谷区との交渉に臨んでいきたいと思います。4月23日、担当課長との話し合いを持ちまし たが、「現状では住民票の記載はできない。住民票不記載のままでは、定額給付金の支給はできない」という回答でした。いま、次に私たちが取るべきアクショ ンを考え中です。

 これからも住民票の記載のみならず、パスポートの取得など、様々なハードルが待ち構えています。それら一つひとつに、その都度ぶつかっていこうとは思っていますが、多くの皆さんのご支援、ご注目があれば、力も出ます。今後ともよろしくお願い致します。

(通信Voiceより)