2001年10月3日 第八回口頭弁論報告


 原告 田中須美子

 今、裁判が面白い! バトルが展開

 まだ証人尋問が行われているわけではないのに、この戸籍続柄裁判では口頭弁論開始から終了まで被告側がヒートアップし、原告側との間でバトルが展開されています。
  見ていても、聞いていても、なかなか面白い裁判風景です。

   前回(第七回)の口頭弁論 から被告側の代理人がほとんど変わり、新たに主任代理人となった訟務検事が、これまでの木で鼻をくくるような役人スタイルとはうって変わり、なぜかむき出しの敵意と喧嘩腰で対応してきています。
  そのため裁判の間中むかむかし続けていますが、くすっと笑ってしまう場面もあります。被告代理人が、私たちに対するのと同じように裁判所に対しても喧嘩腰で行うからです。
  裁判所が、「原告側は条約関係について熱心に主張していますが、被告側は1月16日付け書面に簡単にしか書いていません。憲法と条約の関係でまとめて下さい、政府見解を出して欲しい」と被告側に促すと、当の主任代理人は「必要と考えれば主張します」と言下に答えました。この答え方たるや、切って捨てるかのような調子でした。

 被告側、裁判終結を求める

 「この裁判の訴えの訴訟物は何か」と、訴状を読めばすぐわかるような求釈明を前回被告側はしてきました。そのため今回提出の準備書面(6)で、「差別記載は人格侵害であるので、差別記載の撤廃を求めた差止請求であり、また国会賠償法1上項に基づく損害賠償請求である、これらは訴状の〜頁に記載してある」と答えました。また「損害に対して、原告がどの時点の、誰による行為によって、誰が精神的苦痛を受けたのか」という求釈明に対しても、「訴状で瀬心的苦痛の例を列挙したのは、原告ら自身が同様の体験をしたか、または体験をする現実的な恐れがあるからである。その詳細は立証の段階で明らかにする」と答えました。しかし、被告側はなお納得せず、今回の口頭弁論において、立証は要件事実なのに原告側は主張立証をしないと批判しました。これに対し、区別記載そのものが差別であり、具体的にどのような差別を受けたのか、受ける恐れがあるのかは間接事実であると即反論しました。
  詳細は立証段階でと主張しているにもかかわらず、被告側は、「前回の口頭弁論から3ヶ月も期間があったのに、立証もしない、訴訟物も明らかにしない、不誠実だ」として裁判所に裁判の終結を求めました(10月3日付け被告側準備書面(5)でも主張)。
  しかし、裁判所は「意見として聞いておきます」と取り合いませんでした。

 中野区長(差別記載をやめよという訴えの被告)への訴えを取り下げる申し立て

 この裁判は行政訴訟ではなく民事訴訟であるため、記載の変更を求める相手は、本来は国及び中野区を被告とすべきでしたが、国及び中野区長としてしまいました。
  そのためまず4月20日の 第六回口頭弁論 で提出した準備書面(3)で、記載の変更を求める相手に中野区を被告として追加しましたが、被告側は6月29日の 第七回の口頭弁論 で、追加は認められない旨の準備書面(4)を提出しました。

  裁判所は今回の口頭弁論の冒頭で、中野区を被告に追加することについて認め、中野区に対し、次回に中野区への訴えにつき答弁を行うよう指示しました。
  中野区を被告として追加申し立てをした際に、中野区長への訴えの取り下げを行えば良かったのですが、取り下げの申し立ては今回になりました。この訴えの取り下げ申し立てについて、被告側から理由を問われたので、当事者適格に問題があるからと答えると、すかさず「今のやりとりを調書に記載して下さい」と、被告側代理人は裁判所に求めました。
  また、この取り下げ申し立てに対する被告側の対応は、文書で提出するとのことでした。

 民事行政審議会議事録の文書送付嘱託・調査嘱託申し立て、採用を裁判所留保

 4月20日付の原告側の民事行政審議会議事録の文書送付嘱託・調査嘱託申し立てに対し、被告側は6月29日付で意見書を出し、「請求書の訴訟物が未だ不明であり、本件審理が嘱託を申し立てるに熟していない。申し立てに対する採否を決定するには時期尚早である」「同会の議論が直ちに権利侵害の根拠ないし関係行政機関の職務上の注意義務の発生根拠となるものではない。したがって証拠調べの対象とはならない」と採用に反対していました。
  この意見書に対し、原告側は今回提出の準備書面(5)で、「審議会では続柄欄差別の撤廃が了承されている。どのような経過、理由で法務省より撤廃の方針が打ち出されたかを明らかにすることは、請求原因の成否にも重大な関わりがある。議事録は被告らの違法性の程度・認識に関わる間接事実の立証に資するものである」と、裁判所に申し立ての認容を求めていました。
  しかしこの申し立てについて、憲法違反かどうかを判断するために議事録が必要かどうかについては判断を留保する、と裁判所は採用を留保してしまいました。民事行政審議会での差別記載の撤廃の結論がいかなるものだったのか、どのような経過のなかでその結論になったのかを知るということを、何故わざわざ留保する必要があるのか、非常に疑問だし、不可解な判断でした。