法務大臣 千葉景子 殿

 

        2009年10月15日

  

なくそう戸籍と婚外子差別・交流会

武蔵野市緑町1−6−32田中方

法務大臣就任おめでとうございます。

民法改正に前向きに取り組むとの新聞報道を読み、希望が湧いてきました。

 私たちは、婚外子に対する差別の撤廃と、女性が婚姻外で子どもを出生しても差別を強いられることのない生き方の尊重の実現に向け、20年余にわたり活動している市民団体です。

婚 外子に対する住民票の続柄差別記載の撤廃を求めた住民票続柄裁判を自分たちの問題として共に闘うために、1988年に「会」を結成し住民票の続柄差別記載 や戸籍の続柄差別記載の撤廃、そして相続差別の撤廃など婚外子差別撤廃にむけ運動してきました。その過程で大臣には相続差別撤廃の請願や交流会主催の集会 では大変お世話になりました。改めてお礼を申し上げます。

この20年間のなかで、ご承知のように法制審議会では相続差別の撤廃が答申され、また国連自由権規約委員会や子どもの権利委員会、社会権規約委員会そして女性差別撤廃委員会では、委員会の日本審査があるごとに婚外子差別撤廃が勧告されています。

 これらの勧告の中で、相続差別の撤廃のみならず、出生届の差別記載(出生届書に嫡出子か嫡出でない子の別の記載)や戸籍の続柄差別記載の撤廃も明記されてきました。

しかし現実には、婚外子への相続差別や、出生届の差別記載も残り、2004年11月以前に作成された戸籍での続柄差別記載(婚内子は「長女・長男」、婚外子は「女・男」)も維持されています。このため、日々婚外子や婚外子の親たちは苦しみの中におります。

こ の3日に、民法の相続差別規定に関する最高裁第二小法廷の判決の中で、4人の裁判官中、一人が「違憲」とし、その中で「もはや立法を待つことは許されな い」と断じ、別の一人は補足意見を述べ「違憲の疑いが極めて強い」と法改正を強く促しています。これで5度目の小差による合憲決定となりました。早急な法 改正の実現こそが今求められているのだと思います。

どうか、婚外子差別撤廃に向け、法改正を進めてくださるようお願いします。

つきましては、以下の点につき要望いたします。

 

 

 1 民法900条4号但書の相続差別規定の撤廃。

 

2 戸籍法第49条2項1号「出生届書には、……嫡出子又は嫡出でない子の別を記載しなければならない」の規定の撤廃。
 *この差別的記載を拒否した場合は、出生届は受理されず、戸籍は作成されません。また、戸籍がないことから、このようなケースの場合住民票も作成されず、不利益な生活を強いられています。

* また、戸籍がない場合、たとえ医師が書いた出生証明書があり、父母の日本国籍が証明されても、国は「戸籍によって日本国籍が証明されていない」として、パ スポートの発給を拒否しています。このため親の海外赴任等にともなって、子どもだけが出国できないという事態も生じてきました。

 

  3 今もなお多くの婚外子は戸籍の父母との続柄欄で差別記載されている。この差別続柄を職権により撤廃すること。

     *婚外子本人の申出による更正―再製申出という現在の制度では、申出自体が少なく、圧倒的多くの差別記載が今なお放置されている状態です。

 

4 戸籍法施行規則の附録6号の「長女・長男」という続柄を撤廃すること。すべての人の続柄を、今も婚外子の続柄である「女・男」に変えること。

*2004年11月以降の出生届からは、婚外子の続柄も「長女・長男」に変わりました。しかし戸籍法13条では「父母との続柄」と規定されているにもかかわらず、婚外子の場合は母との続柄が記載されます。続柄に二重基準が導入され、新たな差別が発生したのです。

母との続柄を確認するため、2004年11月以前に戸籍に記載されている差別記載の是正は、婚外子や母からの申出を必要としました。

この結果圧倒的な婚外子が今もなお差別記載されたままとなっています。序列のない続柄に変えれば、婚外子か否かの区別のない続柄として統一できますし、上記3の要望事項である、職権による撤廃が実現できます。