004年10月28日 法務省交渉
嶋嶋久美子
11月初旬に戸籍法施行規則改正ということで、急遽設定された法務省交渉でした。
原告の田中さんのほうで作成した質問事項を、福島事務所が予め法務省に送付したにもかかわらず、もらっていないと言うのです。そこで、まずびっくり。でもこれはほんの序章にすぎませんでした。その場で質問事項を手渡して、以下の回答をしてもらいました。
木で鼻をくくったような法務省の回答
1.戸籍法施行規則改正は、11月1日付けで同日施行。
改正内容は従来から言っているとおりで、嫡出でない子の続柄につき母を基準に「長男・長女」とする。
嫡出でない子の出生届は、11月1日から「長男・長女」で受付ける。
職権更正は一切行わない。申出のみで行う。
2.続柄の記載は、「長女・長男」とするので将来の改正は考えていない。
3.パブリックコメントに寄せられた意見結果については、公表していると考えている。
しかし、直後に発せられた言葉がなんと、「今日すでに記者会見をしました」。
———──もう決まっちゃってるんじゃない!!!
@矛盾だらけ 本当にできるの?
1.拙速
私は5年前まで戸籍係にいましたが、当時は大きな改正の2〜3ヶ月前に通達が出されるのが普通でした。ところが今回は、11月1日規則改正・即日施行、同日通達発出だそうです。まったくバカにした話です。これではちゃんとやれ、と言うほうが無理です。
法務省お得意の、「戸籍の正確性・統一性」が聞いてあきれます。
2.規則違反の記載
婚外子の続柄が「女・男」と記載されていたのは、戸籍法施行規則附録第六号戸籍の記載のひな形がそうなっていたからです。今回の改正では、それが「長女・長男」と変わります。「女・男」というひな形はなくなります。しかし申出がない限り、婚外子の続柄は「女・男」のままです。
法務省はこれまで、ひな形に従って嫡出子と嫡出でない子の続柄を区別していると主張してきたのに、ひな形は同じになったけれど区別記載は続くのです。
3.事務量増大
嫡出子の続柄は父母を基準とするが、嫡出でない子は母を基準とするそうです。
これは、エライコトです。実務の細かい扱いはわかりづらいと思うので、一つだけ例をあげますと、嫡出でない子の出生届があったとき、従来は嫡出子でないことだけ確認すれば足りました。でも今後は、子の母が10歳頃まで遡って戸籍を確認する必要がでてきます。婚外子を何人産んでいるかを確認しなければならないからです。これは大変手間のかかることなのです。出生届を受付ける職員が、「あ、また面倒くさい嫡出でない子だ」と思わなければ良いのですが。
4.周知徹底できない
法務省は、記者会見して新聞に載り、官報に載れば十分な広報をした、と考えているようです。チラシを作ることもしないし、まして本人宛に通知をするなど考えてもいない。今後も広報を行う予定はない、ということでした。
当事者に知らせたいという気持ちは、全くないようでした。
Aなぜ急ぐのか
これについて法務省は、「3月に地裁判決が出たので年内には改正したかった。12月ではドタバタして格好が悪いから11月にした。きりよく1日からとした。」と大真面目に言うのです。法務省が年内と思う気持ちはわかります。でも、格好悪いから11月というのは、実務の混乱を考えれば納得できません。
あとで田中さんから、裁判の結審前にやりたかったのではないかという話を聞いて納得。なんだ、そういうことだったのか。
Bなぜ「女・男」でなく「長女・長男」なのか
法務省は、判決が嫡出子と異なる続柄記載は差別であると言ったから、「長女・長男」にするのだという一点張りでした。しかし、翌日の新聞によれば、嫡出子を変更すると事務作業量が膨大になるため「長女・長男」にした、と書かれています。一体どっちなの?
いずれにしろ、当初は「女・男」方式も視野に入れていた様子であったわけですから、何らかの判断が働いているわけですね。 憲法改悪に連なるものでなければよいのですが。