2002年7月16日 第十二回口頭弁論報告


   原告 田中須美子

<御茶ノ水女子大のゼミ生の皆さんが傍聴にきてくれました>

  御茶ノ水女子大学教授の戒能民江さんが家族法律学のゼミ生の皆さん16〜7人を連れて傍聴に来てくれました。もしそうでなければ10数人ほどの傍聴者になるところでしたので、本当に助かりました。
  2000年11月1日の第4回口頭弁論の際も、十文字女子大学教授の橋本ヒロ子さんが、女性学のゼミ生の方たちを15人も連れて傍聴に来てくれました。96席もの大法廷でしたので、おかげで満席になったと大いに喜びました。(このようにいろいろな大学からゼミ生の方たちを連れてきていただけると、傍聴席もいっぱいになり裁判所へのプレッシャーになっていくので大助かりです。またゼミ生の方にとってもこの傍聴をきっかけにこの裁判のことや裁判を支援している傍聴者のさまざまな思いに接することもできるのではないか、そう一石二鳥ではないか、などと図々しく勝手に思っています。どうかこれからも傍聴よろしくお願いします。)
  裁判終了後の報告交流会は、久しぶりに若い方たちでいっぱいとなり、ゼミ生の皆さんの自己紹介は、聞いていてとても楽しく元気になりました。
  「自分が中学生だった頃、続柄が子と統一された住民票を母親がとってきて喜んで見せてくれたことがあった。続柄が変わったことが、こういう皆さんの裁判があって変わったのだということ、そして中学のときのこととこの裁判が今つながって驚いている」
  「日頃母親に戸籍のおかしさについていろいろ文句を言い、いつかは分籍をしたいと言っていたら、ある日母親からあなたの戸籍、分籍しておいたわよと言われ驚いた」 「事実婚をしている、今後も傍聴していきたい」 「どうして法律婚を守る必要があるのか疑問」等々。すでに事実婚や分籍の実践をしている方が何人もいることに、もうここまできているんだなと新鮮な感動を覚えました。

<「請求の趣旨の特定」の準備書面(9)を陳述>

  「戸籍の続柄差別記載をやめよ」との私たちの訴えが、どのような記載方法にするのかを特定していないから不適法である、そのために却下せよと繰り返し被告側は主張してきました。前回の口頭弁論で裁判長からこの『特定』について検討するよう求められたため、この日の口頭弁論で準備書面(9) (Voice130号に掲載)を以下のような内容で陳述しました。
  『女・男という戸籍の差別記載は、法的にも社会的にも不利益扱いを受けており、耐え難い苦痛を感じている。このような苦痛を感じることなく、婚外子であることを第三者に情報として知らされることのない表示方法は一つのみではなく複数考えられる。どれを選択するかは被告に任されるべきものである。』 『仮に、「娘・息子」と表示されている場合に、「長男・長女」の記載でなければならないと訴えれば、当然、国や自治体の裁量の範囲に属する問題であるとして訴えは却下されるはずである』
  ・・・しかしこんな裁判の入り口で延々議論し、反論のために資料を探し読みこなすという時間を費やすというのはホントにおかしな話です。肝心の本論(差別記載は憲法違反かどうか、記載は必要か、条約違反かどうかについて)では国側は自らの主張に自身が持てないので、入り口論議に終始しているのではないかと思います。
  この日の口頭弁論では、準備書面の他に志学館大教授である澤田省三さんの「戸籍の続柄欄における区別記載に関する意見書」などの書証も提出しました。意見書は元法務省で戸籍行政に携わり人権擁護部第二課長であった経験もふまえ、「区別記載に合理性も必要性もない。差別を公示し、人格権の侵害、プライバシー件の侵害という事象を惹起する要因となっていることが明らかである」と断じています。
  この裁判のために時間を割いて力作を書いていただきました。ありがとうございました。
  前回裁判長から中野区に対し差別記載について主張するよう求められたため、被告側は今回陳述した準備書面(7) (Voice130号に掲載)で「本案に関する被告中野区の主張については、従前の被告国の主張を援用する」とただ一言主張しました。今後の進行を裁判長から尋ねられると、被告側はあいもかわらず「結審を」と答えていました。