2002年12月3日 第14回口頭弁論報告


 田中須美子

   4時半の裁判開始時。709号法廷の傍聴席は傍聴者でほぼ埋まっていました。わぁ、すごい!と、法廷席に座ってしばし感動していました。
  せっかく傍聴に駆けつけてくれても、書類のやり取りのみで何が進行しているのか全く分からない状況のため、この日は裁判レジメを支援者と思われる傍聴者を対象に(被告側も傍聴席に座っているため)配布してもらうことにしました。

  被告側の主任代理人と思われる女性がきていなかったので、異動になってしまったのかと思い、国側の代理人に聞いてみると休みとのことでした。(裁判には余り関係ないことなのかもしれませんが、紺や灰色の背広姿の男性だけを毎回見ていると、それだけで古さの象徴のような気がしてきます。)

  被告の主張する「一覧性」とは何かについてまとめるよう求められていた文書が、約束の3週間をはるかに過ぎて、12月3日の1週間ぐらい前になってやっと出てきたため、私たちの反論文書は間に合わず次回提出になりました。また、この日証人申請している人の陳述書を提出したので、証人採用の決定にはいたりませんでした。
  住民票続柄裁判の時は、一審では星野澄子さん、佐藤文明さん、本人の3人、二審では落合恵子さん、中田千鶴子さんの二人の証人尋問が行われたのですが、この戸籍続柄裁判ではこのままでは証人尋問はないのかな、と心配になってきます。

  裁判終了後、いつものように弁護士会館で裁判報告・交流会を持ち、40人近くの傍聴者のうち、24名もの人が参加してくれました。
  今回もお茶の水女子大のゼミ生が傍聴に来てくれ、「差別撤廃させるのだと、誇らしげに座って傍聴していた」との自己紹介がありました。またこの日は住民票続柄裁判の一審判決の時に取材で出会って以来この裁判を支えてくださっている谷岡さんが、教えている東海大学の学生(1、2年生)全員を連れて傍聴と報告交流会に参加してくれました。「どんなことをするのだろう、とどきどきしながら傍聴していたらあっという間に終わった。パスポートを取るときしか戸籍は関係なかったが、戸籍について考えていく良いきっかけになった」「社会勉強になってよかった、これからも来たい」などなどの感想がありました。
  この傍聴に来てくれた学生のうちの3人が、谷岡さんの教えるラジオ番組制作の授業でこの裁判についてレポート作成をすることになり、2003年に入って取材を受けました。この裁判が授業に結びつき、かつ自分の行き方を考える材料になっていくということは素晴らしいことだと思います。おかげでいつもだとだらけるお正月がほどよい緊張を持って過ごせました。

  この日は、乳児連れの方が北海道から上京したお母さんと一緒に、また年末に出産予定という方も連れ合いの方と一緒に参加してくれました。それぞれの一言を聞きながら充実した中であっという間に2002年最後の裁判報告交流会が終わりました。


<戸籍法令は、戸籍続柄欄において嫡出子と嫡出でない子の区別を明らかにすることを定めている、と被告側主張>

  12月3日付け陳述の被告側準備書面(9)において、国側は、以下のような論法で「続柄の区別記載は民法に基づき戸籍法令が定めており、民法の条項は憲法違反ではないと1995年7月の際高裁判決が判示している」から、違憲でもなく違法でもないと主張しています。

 (1)民法779条、790条、900条4号は、嫡出子と嫡出でない子の区別のいずれであるかによって法的効果を異にすることを定めており、これらの区別が憲法14条1項に違反しないことは最高裁平成7年7月5日大法廷判決の判示するところである。
 (2)してみれば、戸籍においては嫡出子と嫡出でない子の区別を明らかにすることが求められていると言うべきである。
 (3)そのため、戸籍法は父母との続柄を戸籍に記載するよう定め、嫡出子と嫡出でない子の別を出生届書の必要的記載事項と定めているのである。
 (4)そして、戸籍法125条は、戸籍続柄欄の記載方法を含めた戸籍事務処理全般について、戸籍法施行規則に委任することを定め、戸籍法施行規則33条は「戸籍の記載は、附録第六号のひな形に定めた相当欄にこれをしなければならない」とし、ひな形において、戸籍続柄欄において嫡出子と嫡出でない子の区別を明らかにすることを定めているのである。

  しかし、民法で婚外子かどうかの区別につき規定があるからといって、戸籍の続柄で区別記載することが求められているわけではありません。また戸籍法では確かに父母との続柄記載の規定がありますが、続柄で区別記載をせよなどとは規定していません。ここははっきりしています。しかし被告は、「民法ないし戸籍方のいずれにも、なるべく目立たないように記載すべき旨の規定は存在しない」と述べ、だから区別記載をしたひな形は、民法や戸籍法の委任の範囲を超えるものではない、と主張しています。 ”傑作なる”論理です。これらの主張や一覧性の主張などへの全面反論について、現在準備中です。