国連女性差別撤廃委員会、戸籍続柄差別記載の撤廃を勧告
(2003年7月18日)



 −戸籍の差別記載や相続差別が女性に重大な影響をもたらすことに懸念を表明−

 女性差別撤廃委員会を傍聴した6日間、委員会が開始される前や休憩時間及び委員会終了後に、委員一人一人に接触し22人中17人の委員に婚外子差別の問題について訴えることができました(各委員へのロビー活動についてもご覧ください)。カウンターレポートでは婚外子差別全体について報告しましたが、この場では特に戸籍続柄差別記載や出生届書の問題を強く訴えました。戸籍続柄差別記載の撤廃について勧告に取り上げてもらうことによって、婚外子差別はおかしいという社会的包囲網が生み出され、判決で勝訴を勝ち取っていきたい、そう思いを定めたロビー活動でした。

 また、この婚外子差別が女性差別撤廃委委員会審査に該当する内容であるかを理解してもらうために(前回の審査で、日本政府が婚外子差別の問題は委員会審査とは無関係との回答を行っていたため)、自己紹介を行いなぜ婚姻届を出さなかったのか、その結果子どもが差別され、自身も「ひどい母親だ」と非難されてきたことを説明していきました。

 その上で、加藤登紀子さんから非婚で子ども生む女性への差別や非難が強く、法制度で婚外子への差別が行われていることによって婚外子出生率が非常に少なく、婚外子本人のみならず女性自身も苦しんでいることを説明しました。

 このような訴えを委員会が受け止め、7月18日日本政府に対し戸籍差別記載や相続差別規定の撤廃が勧告されました。さらに、戸籍の差別記載や相続差別が「女性に対してもたらす重大な影響についても懸念する」と指摘がなされ、その意味も含め差別の撤廃が勧告されました。

 これまで非婚で子どもを生もうとする、あるいは生んでいった女性に対して、非難が浴びせられ、病院では中絶まで勧められるなどして、肉体的精神的に追い詰めていきました。しかし今回の勧告は、「そのような非難は間違っている、非婚で子どもを生むことはいけないことなのではない、差別することが誤りなのだ」と言ってくれたのです。この懸念表明は、非婚で子どもを生もうとする女性や、生んだ女性に大きな励ましを与えるものだと思います。

  多くの方の協力の下に奮闘してきたことが勧告として結果し、この勧告を戸籍裁判での原告尋問に活かしかつそれが報道でも紹介されました。最終的にはこれらが来るべき判決に大きな影響をもたらしてくれることを願っています。



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2003年7月8日女性差別撤廃委員会、第4回及び第5回日本政府報告書審査
最終コメント(7月18日)  戸籍続柄差別記載関連部分抜粋



なくそう戸籍と婚外子差別・交流会訳

                     翻訳 大村芳昭





1.委員会は、2003年7月8日の第617回及び第618回会合において、日本の (CEDAW/C/JPN/4 and CEDAW/C/JPN/5) を審査した。


II. 委員会の最終コメント

 主要な懸念及び勧告


35. 委員会は、民法の中に現在でも依然として差別的な条項が残っていることに懸念を表明する。その中には、結婚最低年齢や、離婚後の女性が再婚するために必要な待婚期間、及び結婚した夫婦の氏の選択に関する条項が含まれる。委員会は、また、婚外子に対する、戸籍と相続権に関する法律及び行政実務上の差別、そして、それらが女性に対してもたらす重大な影響についても懸念する。

36. 委員会は日本政府に対して、民法の中にいまだに残る差別的な条項を削除し、立法や行政実務を女性差別撤廃条約に適合させることを求める。


<原文>

CEDAW/C/2003/II/CRP.3/Add.1/Rev.1

ADVANCE UNEDITED COPY

18 July 2003

Original: English

Committee on the Elimination of Discrimination against Women Twenty-ninth

session 30 June -18 July 2003



1. The Committee considered the fourth and fifth periodic reports of Japan

(CEDAW/C/JPN/4 and CEDAW/C/JPN/5)at its 617th and 618th meetings on 8 July 2003.

II. Concluding comments of the Committee Principal areas of concern and recommendations



35. The Committee expresses concern that the Civil Code still contains discriminatory provisions, including those with respect to the minimum age for marriage, the waiting period required for women to remarry after divorce and the choice of surnames for married couples. It is also concerned about discrimination in law and administrative practice against children born out of wedlock with regard to registration and inheritance rights and the resulting considerable impact on women.



36. The Committee requests the State party to repeal discriminatory legal provisions that still exist in the Civil Code and to bring legislation and administrative practice into line with the Convention.



 
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尚、女性差別撤廃委員会での日本審査に関するやりとりのうち、法の前の平等、婚姻・家族関係における差別撤廃関係の部分の和訳は、交流会通信 Voice 第142号に掲載されています。