国際婚外子、出生後認知でも日本国籍取得へ

’08,12月国籍法・国籍法施行規則改正、’09、1 / 1より施行―

 

 

08年6月の最高裁違憲判決を受け、国籍取得で両親の婚姻要件を撤廃!>

 2008年6月4日最高裁は、母が外国人父が日本人の間に生まれた婚外子を父が出生後に認知しても、婚姻要件を満たさないため日本国籍を認めないとした国籍法は憲法違反であると判断した。この判決を受け、08年12月に改正された国籍法と国籍法施行規則が09年1月1日から施行され、両親の婚姻要件が撤廃され、出生後に父が認知した婚外子に日本国籍が認められるようになった。

 なお、この改正法成立にあたっては、法案の全会一致による衆議院通過後に、「偽装認知」が増えるとの反対意見やDNA鑑定を 条件にすべきだとの意見が展開され、その結果届出の審査強化や虚偽の届出の罰則が新設された。同時に父子一緒に写した写真の提出や国籍法の施行状況の半年 ごとの国会への報告、DNA鑑定導入の可否の検討を盛り込んだ附帯決議が採択された。過去の附帯決議は、法律ではないためその場限りのものになって来た が、今回は権力側からの決議なので予断を許さない。

 現にこの附帯決議の父子一緒に写した写真の提出については、国籍法施行規則第1条第5項で「親子関係を認めるに足りる資料の添付」との項目が盛り込まれた。その具体的資料としては、08年12月18日の通達の中で、例として「子と父母三人が写った写真」と規定され、決議が強化された形となっている。更に認知した父または母の出生時からの戸籍・除籍の謄本なども提出が義務付けられた。

 あのすばらしい最高裁違憲判決に感動していたら、こんな反動が! 今後検討されることになったDNA鑑定は、外国人母の場合のみDNA鑑定を義務付けるものであり、新たな差別を生み、人権侵害である。何よりも子どもの人権を最優先に!

 

 【改正法】( 認知された子の国籍の取得)

   第3条  父又は母が認知した子 で二十歳未満のもの(日本国民であった者を除く)は、認知をした父又は母が子の出生の時に日本国民であった場合において、その父又は母が現に日本国民であ るとき、又はその死亡の時に日本国民であったときは、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができる。

 (罰則)*新設

   第20条 第3条第1項の規定による届出をする場合において、虚偽の届出をした者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。

   2 前項の罪は、刑法(明治40年法律第45号)第2条の例に従う。

 【旧法】( 準正による国籍の取得)

   第3条  父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得した子で(

20歳未満のもの、以下上記改正法条文と同じ)   

                         *下線部分は改正箇所

 【改正国籍法施行規則

   第1条(国籍取得の届出)

   5項(*新設)

   法第3条第 1項の規定による国籍取得の届出をする場合においては、前項の届書に次に掲げる書類を添付しなければならない。ただしやむを得ない理由により、第3号又は 第4号の書類を添付することができないときは、その理由を記載した書類を提出するものとし、認知の裁判が確定しているときは、第3号から第5号までの書類 の添付を要しないものとする。

  1 認知した父又は母の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書

 2 国籍の取得をしようとする者の出生を証する書面

  3 認知に至った経緯等を記載した父母の申述書

  4 母が国籍の取得をしようとする者を懐胎した時期に係る父母の渡航履歴を証する書面

  5 その他実親子関係を認めるに足りる資料

 

<日本人と外国人の間に生まれた婚外子の日本国籍取得とその取得日>

  1 母が日本人の場合、出生で日本国籍を取得する。

  2 母が外国人で父が日本人の場合は

    ・父の胎児認知により、出生で日本国籍を取得する。

    ・出生後に父が認知をした場合は、届出によって国籍を取得する。

     *・の場合は、父の認知後に法務大臣に国籍取得を届出なければならない(届出先は法務局)が、この国籍取得の届出の日が日本国籍取得の日(法第3条)  

    

<国籍を取得した場合の称すべき氏及び入籍する戸籍>

 国籍を取得した子は、氏を新たに定め、新戸籍を編成することになる。

  【新戸籍…本籍は自由に定めることができる 筆頭者は子本人】

  子本人が筆頭者となる新戸籍をつくる理由

  ◆「子は婚外子のため、当然には父の氏を称して父の戸籍に入ることはできず、子について氏と本籍を設定して新戸籍を編成することになる」

   (戸籍法第22条、昭和29.3.18民事甲611回答)

  ◆戸籍法第22条 父又は母の戸籍に入る者を除く外、戸籍に記載がない者についてあらたに戸籍の記載をすべきときは、新戸籍を編成する。

 

<手続きの流れ(子どもが国内にいる場合)>

 1 認知届を市区町村長に提出(父の戸籍の身分事項欄に認知事項が記載される)

   【届出人:父】 【届出地:父の本籍地又は所在地】

 2 法務大臣に国籍取得の届出

   【届出人:法定代理人 *15歳以上は子本人】

   【届出先:子の住所地を管轄する法務局又は地方法務局】

 3 市区町村長に国籍取得の届出

   【届出人:法定代理人 *15歳以上は子本人でも届出できる】

   【届出地:子本人の本籍地又は届出人の所在地】

   【届出期間:国籍取得の日(法務大臣への届出の日)から1か月以内】

 

                      (通信Voiceより 田中記)