声 明

 1999年11月22日
  戸籍続柄差別撤廃裁判原告
  田中須美子
  福喜多昇

 婚外子に対する戸籍の続柄差別の撤廃を求めて、本日提訴しました。

 住民票の婚外子に対する続柄差別表記は撤廃されましたが、戸籍の続柄欄では、今もなお、婚外子か否かで区別し、婚内子は「長女」「長男」、婚外子は「女」「男」という差別表記をしています。

 子どもは親を選んで生まれてくることはできません。にもかかわらず、自分の親が婚姻をしていないということで、差別の烙印を押されることは、理不尽以外の何者でもありません。しかもこの差別が烙印された戸籍の提出によって、就職や進学などの際に不利に扱われていくという現実があります。

 戸籍は、日常生活の様々な場面で提出を求められています。そのたびに、この差別表記が人目に晒されていきます。と同時に、親や子自らにもこの差別表記を書面の中で書くように強いられるのです。

 この差別表記は子どもへの差別であると同時にその親への差別でもあると思います。婚姻しないで婚外子を生んだこと、そのこと自身が許されないこととして、この差別表記によって苦痛を与えるものとしての意味を持っていると思います。

 女性差別撤廃条約は、「婚姻しているか否かを問わず親として同一の権利と責任を有する」「子の利益は至上である」と規定しています。親子ともども、この差別から解き放たれたいと思います。

 先進国と呼ばれる国の中で、日本・ドイツ・フランスのみで婚外子差別が維持されてきました。しかし、ドイツでは1997年12月婚外子差別を撤廃し、嫡出子・非嫡出子という概念そのものをなくしています。婚外子差別撤廃は今や国際的流れとなっています。

 まずは日本も、戸籍から親子の続柄そのものをなくし、差別をなくす時期に来ているのではないかと思います。

 婚外子・婚内子の差別のみならず、長女・長男という序列も辞め、続柄欄をなくして性別欄を新設すればよいと考えます。

 長女・次女、長男・次男という序列は、戦前の家制度において必要とされたものでした。しかし家制度を廃止した戦後民法下の戸籍法において、即撤廃されず今日に至りました。今やこのような序列的表記は時代にそぐわなくなってきています。たとえば少子化の時代で一人っ子が多くなっている中、二人目三人目もいないのに「長女」「長男」と呼ぶおかしさもあります。また離婚、再婚が増えているなか、同じ戸籍に「長女」「長女」「長女」と並ぶおかしさ不合理さがあります。

 この差別表記撤廃に向け、機は熟していると思います。裁判で、差別表記は憲法違反との判決を勝ち取り、戸籍から続柄欄を無くしていきたいと思います。

(この声明は、1999年11月22日提訴後の記者会見で配布したものです)