2004年10月20日 全国連合戸籍事務協議会総会
岩手県より出された要望事項、賛成多数で決議される
—台風の中、総会会場前でビラまきー
  


  全国市町村戸籍事務担当者の集まりである「全国連合戸籍事務協議会」の総会が10月20日に行われ、岩手県より出されていた「戸籍の父母との続柄更正に関する要望事項」が討議されました。私たちは、急きょこの総会出席者に向け、下記の文面のビラをまき 「男・女」への続柄への統一と、職権による更生をと訴えました。

  この日台風が東京を直撃し強い雨が降る中、神田神保町近くの共立女子学園講堂前で、総勢14人(一人は雨に濡れないようビニールで覆ったタレ幕を掲げ、続柄は「男・女」へをアピール)、参加者にビラを手渡しました。

  時間がなく質疑はなかったそうですが、提案された要望事項は賛成多数で決議されました。市町村や法務局の多くは法務省の案では混乱するだけで「男・女」への統一を、との思いが強いことは、法務省が聞き取りをした意見集約からも明らかです。

  *しかし法務省はこれらの意見も無視し、更には総会で討議されることを知りながら、決議は配慮すると私たちに約束をしていたにもかかわらず、総会のだいぶ前に11月1日の戸籍法施行規則改正実施を決定していたのでした。



下記は、共立講堂前で『全国連合戸籍事務協議会総会』出席者にまいたビラの文面です


戸籍の父母との続柄は、「男・女」への統一を

—法務省案は新たな差別と混乱をもたらすー

     なくそう戸籍と婚外子差別・交流会

  全国連合戸籍事務協議会総会にご出席の皆様に訴えます。

  本日午後の合同研修会において、岩手県から提案されている「3月9日付民事第一課補佐官事務連絡『嫡出でない子の父母との続柄欄の記載事項について』への要望」が討議されます。

  この3月9日付け事務連絡に関し全国の市区町村から法務省に上げられた意見は、父母との続柄は「男」「女」もしくは「子(男)・子(女)」への統一をという意見が多数を占め、「長男・長女」への統一をとの意見は少数でした。6月4日に行われた私達との話し合いの中で法務省が述べていました。にもかかわらず法務省はこれらの多数意見を無視し、父母との続柄を「長男」「長女」に統一し、更正は申し出により行うとの考えを変えていません。

  もし法務省案のまま続柄の変更が行われたら下記に述べるような、新たな差別と現場での混乱が予想されることは目に見えています。

  幸いなことに法務省は本日の総会での論議を踏まえ検討するとしていますので、ぜひ以下に述べる問題点を受け止めていただき、新たな婚外子差別を生み出し、婚外子やその親に苦痛を与える法務省案に反対を表明してくださるよう願っています。このことは日々住民と接していらっしゃる皆様だからこそ、表明できることではないかと思います。

  住民票の続柄を子どもは皆「子」と統一するとの自治省(当時)通達改正に大きな影響を及ぼしたのは、他ならぬこの全国連合戸籍事務協議会総会での1993年、1994年2年連続の続柄差別記載撤廃の決議でした。くしくも丸10年となる本日の総会で、今度は、戸籍の続柄記載の変更の問題が討議されることに何か歴史的意味を感じてしまいます。


 「婚外子は母を単位にした続柄」は戸籍法違反!

  「長男・長女」という続柄は、戦後家督相続が廃止された際になくすべきでしたが、続柄で婚外子との区別を行うとの方針により維持されてしまいました。しかし今回その区別がなくなるのですから、もはや「長男・長女」を維持する根拠はありません。

  それでも「長男・長女」を残し、婚内子は「父母との続柄」婚外子は「母を単位にした続柄」との二重基準の続柄を設けようとしています。同じ父母でありながら一度目の子どもは婚姻中、二度目の子どもは事実婚という場合、その子が同性ならば二人とも「長女」「長女」となるのです。こんなおかしなことってあるでしょうか。

  婚外子は「母との続柄」(認知の有無にかかわらず)との方針は婚外子に対する新たな差別であり、かつ「実父母との続柄」を記載すると規定した戸籍法に違反します。


  申し出ることができない婚外子は、差別記載が維持されるなんて!

  婚外子に対する社会的差別があると戸籍続柄裁判判決でも断じているように、婚外子やその親は婚外子であることを知られたくない、差別を受けたくないと思いながら生きています。窓口に申し出なければ差別記載が撤廃されないということになれば、一体どれだけの婚外子もしくはその親たちが申し出に行けるというのでしょうか。

  窓口に申し出ることにより、もしかしたら自分もしくは自分の子どもが婚外子だということを知られてしまう、窓口の近辺に知りあいがいるかもしれない、そんなおびえの中で申し出ることを躊躇することは目に見えています。

  婚外子であることを知られることにより、新たに周囲から誹謗中傷が行われるかもしれませんし差別を受けるようになるかもしれません。これに対し行政は責任をとってはくれず、本人や親だけが苦しむことになるのです。

  このような恐れから申し出ることができない婚外子は、続柄差別記載が維持されたままとなってしまいます。これは申し出ない本人が悪いということになるのでしょうか。


  申し出による更正は、窓口で混乱をもたらす!

  続柄を「男・女」に統一せず、「長男・長女」の表記にすることは、婚外子への新たな差別を生み出すと共に、申し出による更正という矛盾をも生み出し、更には窓口に混乱をもたらすものと思います。

  その一例としては、申し出の際に戸籍まで提出させることです。またその戸籍も現在の戸籍だけで良いのか一体どこまで戸籍を遡るのかという点や、住所地への提出でも良いのかなどの基本点すらまだ明らかになっていませんが、結局は一度では用をなさず二度三度と窓口に出向かなければならなくなるかもしれません。戸籍の交付が有料であることも含め、なぜここまで本人や親にさせなければならないのでしょうか。

  周知方法も不明  該当者に通知をするのか、広報で行うのか等も決まっていませんが (周知の表現も差別を生む可能性もあります)、個人宛の通知でない限り、申し出による更正ということを知らない該当者が多数生まれると思います。知らないがゆえに申し出られず、その間に戸籍の提出により差別を受けた場合、一体誰が責任を取るのでしょうか。


  続柄の更正は申し出ではなく、職権で!

  かって住民票がそうであったように、戸籍の続柄差別記載の撤廃は本来行政が職権で行うべきものではないでしょうか。差別記載をしていたのは国なのですから、差別記載をやめるのは個々人の希望に基づくものではなく、国の責任で市町村と共に一斉に処理すべき問題ではないのでしょうか。 それが国としての責任の取り方ではないかと思います。