出生届差別記載拒否でも、出生届が受理されます

<符せん処理からも差別文言が撤廃される> −長年の交渉を通し−2010,3/24法務省通知  
「嫡出子・嫡出でない子」の欄それぞれに二重線などの傍線を引き、その他欄に、「子は母の氏を称する」と記載して届出−受理となる。
 −その他欄に届出人が記載しない場合でも、窓口で差別記載を拒否し続ければ、行政側がその他欄に記載する−


■出生届差別記載欄撤廃−記載拒否の闘い、一歩前進へ。
出生届書の「嫡出子・嫡出でない子」の欄のチェックを拒否しても、出生届が不受理にならず受理されるようになりました。(2010年3月24日法務省通 知により)
これから出生届を出される皆さん! 出生届を出すときは、最初から「嫡出子・嫡出でない子」の欄に傍線を引き、その他欄に“出生子は母の氏を称する”と 記載しておくことが肝心です。
そうでない場合、窓口で職員から差別記載欄にチェックを求められます。それは通知で“補正を求め、応じない場合はその他欄に…記載、と指導されているた めです。
しかし記載を求められても拒否すれば、その他欄に“出生子は母の氏を称する”ないし“出生子は母の戸籍に入る”(いづれか選択できる)と記載されます。 ここで自分で記載しても問題はありません。

■これまでとこれから  
これまで、市区町村の役所の窓口で、出生届の父母との続柄欄で「嫡出でない子」にチェックをさせることは差別であると伝え、その差別記載を拒否する闘い が全国で展開されてきました。差別記載を拒否すると行政側は符せんで差別記載を行ってしまうため、その記載も拒否しました。すると不受理扱いとなり、出生 届を受け取ってもらえませんでした。最近では不受理にせずに、法務局への照会のためと言って出生届を預かり、法務局照会の上そのまま符せん処理して受理 してしまうという“騙し”のやり方(行政を信じて預けたにもかかわらず、そのまま符せん処理して受理されてしまうことは届出人にとっては騙された思いにな る)が増えてきていました。 私たちは、法務省交渉の中で、国連の規約人権委員会や女性差別撤廃委員会などからの差別記載欄撤廃の勧告を示しながら、繰り返し撤廃を求めてきました。 と同時に差別記載拒否−符せん処理拒否をしても不受理にせず(そのまま受取り符せん処理して受理してしまうという“だまし討ち”も行うことなく)、受理す るよう求めてきました。 窓口で何時間にもわたって(時には何日も)孤立無縁で職員に働きかけ、時には法務省とやりあい続ける苦痛やしんどさ、時間・労力の消費は大変なものがあ ります。頑張ったけれども自分達の思いが行政に受け入れられず、やむなく差別記載にチェックして出生届を出していった人たちの幾多の苦痛があります。何人 もの方から行政の窓口や法務局職員からこう言われたがと問合せがあります。そのため、差別記載はできないとの思いや国連勧告を受け止め、符せん処理を拒否 した場合でも、出生届を受理するよう法務省に求めてきました。 今回の通知によって、差別記載撤廃実現にまでは至りませんでしたが、差別記載拒否−符せん処理拒否しても受理せよとの要請は何とか実現できました。これ まで大変な思いをして窓口闘争を闘ってきた方や差別記載を苦痛を抱きながら出生届を出していった方たちにとって、少しだけかもしれませんが朗報だったので はないかと思います。 ただ今回の改善は、抜本的なものではありません。このような改善がされたことを知らず、差別記載にチェックしなければならないと思い、嫌な思いを抱きつ つチェックしてしまう人は多数いると思います。またわざわざ差別記載欄に傍線を引き、その他欄にその旨記載しなければならないという手順を踏まなければな らない手数が残ります。何よりも差別記載欄が維持されていること事態が差別であり、苦痛を強いています。このため私たちは根本的解決として差別記載欄の撤 廃を求めて、闘いを続けていきたいと思います。

■通達の実施を求め,2010年3/25に法務省交渉  
まだかまだかと待っていた法務省の通知が、やっと2010年3月24日に出されました。2009年の11月13日に法務省と交渉をもち、その中で届出人 が差別記載をあくまでも拒否した場合は、その他欄に「出生子は母の氏を称する」又は「出生子は母の戸籍に入る」などの付箋処理をする、届出人が自らその他 欄に上記を書いて届け出ても良い、この取り扱いの変更について近いうちに通達を出すと法務省が約束しました。なかなか通達が出されず、いつ出るのかと催促 の電話もし、このままでは年度を超え、担当者が異動してまた一から始めることになるとの危機感から、2月半ばに交渉を要請しましたが、延びに延びて3月 25日に期日が設定されました。 交渉を要請した際に出した「質問と要請事項」の第1に通達が未だ出だされていないことをあげていたためか、交渉の前日の24日に通知が出されていました (通知が出されたことを知ったのは、この交渉直前でした)! 交渉では「通知」(通達ではなく通知となりました)を法務省側が読み説明を加えることで終始 しました。

■婚外子の出生届、届出人父にチェックでも受理 (これまでは不受理となっていた)    
出生届の届出人は、婚内子の場合は父または母に、婚外子の場合は母に、届出義務があります。一方婚外子の父は“同居者”としてでなければ出生届を出せま せんでした。 しかし今後は、胎児認知や出生届と同時の認知届の場合、父が「同居者」にチェックせずに「父」にチェックしても受理されることになりました。  ただし、その他欄に「父は、同居者である」等の記載が求められます。 これまで、子どもの父なのに“父”にチェックできないのはおかしいと、“父”にチェックして届出をすると、行政側はそれを削除し「同居者」にチェックを 強要し、それを拒否すると不受理になる事態が数多くありました。 このため法務省交渉の度に、届出人父チェックでも受理せよと求めてきました。しかし“父届出”は義務か資格のみかで結論が出ず、法務省が検討したいと 言ってから2年以上が経っていました。 法務省は、今回の通知の中で、父にチェックしてもその他欄に「父は同居者である」等と記載すれば受理する取り扱いに変更しました。一歩前進となりまし た。しかし、この余計なものを記載しないでも良いように、今後も要請し続けていきたいと思います。                   
(田中須美子)                   
(Voice2010、3−5月号より)