20周年おめでとうございます!

 

池田 幹子

 

 私にも田中さんたちのお子さんと同じ年の子がおり、交流会20周年記念集会に感慨深い思いで参加しました。出生届の窓口で、 事実婚のつれあいが悪戦苦闘したらしいこと、住民票続柄の異議申し立ての期日が迫り、授乳期の寝不足の中、赤ん坊をかかえて机に向かったことなど、次々と 思い出します。田中さん・福喜多さんの提訴が、裁判の勝敗を越えて日本の婚外子差別制度を揺り動かす大きな力となったことを振り返り、感謝を込めてこの 20周年を祝いたいと思います。私事ですが私は3月末で定年退職となり、自分自身の人生の節目を迎えた折りでもありました。

 

教員としての道のりの中で

 3月末に、19年前の卒業生の同期会があり、久しぶりに顔を合わせた卒業生に開口一番「先生,覚えてますよ!先生が別姓のこ とや市民運動のことを話してくれたこと」と言われました。別の卒業生は「あの頃は先生が何を言っているのかさっぱりわからなかったけれど」と言いながら、 僧侶になった自分が道で戒名で呼びかけられて戸惑うことと重ね合わせてくれました。20年前のあの頃、結構自分が空回りしていると感じていたので、そんな 風に卒業生が覚えていてくれたことが、嬉しい驚きでした。思えば、最初に「事実婚でやってゆきます、名前は変えません」と話したときの生徒だった女性が後 に都立高校の教員となり、自分の事実婚に「結婚祝い金」が出ないのはおかしいと共済関係に働きかけて規定を変えさせて「祝い金」を受け取った、と聞いたと きにも、驚いたものでした。こうやって若い人たちに乗り越えられて行くことは、教員の仕事の大きな喜びだったと改めて思います。

 

「君が代」伴奏命令とのせめぎあい

 ここ数年は「東京都の教育改革」、とくに「君が代」「日の丸」の強制に振り回されて、交流会の活動を担うことができず、心苦 しく思っています。音楽教員として「君が代」を弾かなかったためにこの5年間で4回の処分を受け、3月30日に最後の「減給10分の1、6ヶ月」という処 分を発令されました。それでも、「君が代」を弾かずに定年まで漕ぎ着けられて、本当にほっとしています。

 「婚外子差別」を生む「家制度」が、「天皇制」に根ざすものであることを交流会でも学習しましたが、色々な面で「他人と違 う」ことを嫌う、個人の尊厳が確立できていないことが、「権力による強制」の温床になっていると思います。「天皇を讃える歌」は「天皇のために命を捧げる ことが最高の道徳」と子どもたちに教え込み、若者を侵略戦争に駆り立てた、という重い歴史を負っています。今、東京都の公立学校では、マスゲームのような 「全員の起立による国歌斉唱」という表現行為が強制され、「さからえない」ものだと刷り込んでゆきます。「指定された席で国旗に向かって起立し国歌を斉唱 する」と教員に職務命令が出され、生徒たちにも(国歌斉唱時に)「起立しない生徒がいたら司会が再度起立を促す」と司会台本に書き込ませる都立高校が急増 しています。その「君が代」の伴奏を断って、処分が毎回どんどん重くなりました。

 また私は、前任校の卒業式で来賓紹介の際「おめでとうございます。色々な強制の下であっても、自分で判断し行動できる力を磨 いていってください」と餞の言葉を添えたことが、「不適切だ」と東京都教育委員会の調査・指導措置の対象とされました。色々な思い出を込めて卒業生を祝福 した言葉が不適切である理由を質したいと裁判に訴えましたが、「生徒に対し国旗国歌に対する対応は個々に委ねられる旨述べる」のと同旨だと、生徒たちの問 題にまで波及するような言及が判決に含まれ、地裁・高裁ともに請求棄却とされ、上告しました。「憲法に則って判断する」という本来の役割を裁判所が果たさ ないために、教育現場がますます困難になっています。  

 

コンサート自由な風の歌4

 5月30日(土)午後にセシオン杉並(東高円寺)で「コンサート・自由な風の歌」を開催します。喜寿を迎えてますます充実し た音楽活動を展開している林光さんが、市民とともに作り上げるコンサートが4回目を迎えることになりました。音楽家の皆さんのご協力により、収益は今回も 音楽教員の裁判にカンパされます。土曜日の午後なので気軽に来ていただきたいと、思い切ってチケット代を2千円(小中学生千円)としました。第一線の音楽 家による本格的なコンサートが、破格な料金ですから、聴き逃したらもったいない!と自信を持ってお薦めできます。

 今回のプログラムはカザルスやロルカ、ファリャなど、フランコの独裁政権に抵抗を貫いたスペインの音楽家たちの作品を中心と しています。「カタロニアの鳥たちはピース、ピースと歌う」というカザルスの言葉とともに知られる「鳥の歌」も、チェロとピアノの伴奏で合唱します。その 音楽の伸びやかさ、豊かさに、すぐにとけ込んでいただけると思います。どうぞ、聴きにいらして下さい!

                    (通信Voiceより)