2000年5月17日 第二回口頭弁論報告



 戸籍続柄差別裁判原告 田中須美子

 これまで見たことがない、人間的な裁判風景がそこにはありました。
  その象徴的なものとしては、口頭弁論終了後、「それでは、お疲れさまでした」と裁判長がみんなに挨拶をして退席したことです。これまでのほとんどの裁判では、裁判所職員による起立の号令の下、みなが起立するなかで、裁判官は黙って退席するのが常でした。しかし、この裁判では様相を異にしていました。
  次回日程の決め方にしても、「夏休みに入るので」というと、「いいですよ、夏休みは皆必要ですから」という対応でしたし、法廷の決め方についても、後に述べるように、”裁判所の専決事項だ”、なんていう態度は取りませんでした。訴訟指揮にしても、こちらの主張を的確に、わかりやすく捉え返しそれで良いかを確認するという進行となっています。
  とても気持ちの良い、すがすがしい裁判の進行です。

  裁判の内容としては、前回、被告側から「区別する記載を病めよとは、本人の続柄欄の記載の抹消を求める趣旨か」との求釈明があったので、今回、「抹消を求めることと同意ではない」旨の準備書面(1) (voice109号に掲載)を提出しました。
  この私たちの回答について、「原告側の回答は、区別しない記載を求めるということであり、具体的方法は被告が考えよ、ということですね」と田代雅彦裁判長から確認されたので概ねその通りと答えました。この点について、次回に釈明を行うよう、裁判長が求めました。

  この後、原告側より、
  (1)国際条約違反について被告側が争うとしていること
  (2)民事行政審議会では、民法が改正された折には続柄表記の差別的記載を改めることが了承されていたこと
これらについて明確な認否を行うことを被告側に求め、被告側も了承し、その後次回期日を決め、法廷の件でのやりとりが裁判長との間であった上で、口頭弁論が終了しました。

 口頭弁論ってほんとうにいいものです
  - 出会いがあり、相手が見え、自分が見えてくる そんな交流があります -

 裁判を傍聴された方のうち何人かの方は、職場に戻るなどで帰り、弁護士会館で行われた交流会には23名の方が参加しました。5〜6分であっという間に終わってしまった裁判内容の解説を代理人の榊原富士子さんと林陽子さんにしてもらい、そのあと参加者一人一人から自己紹介を受けました。
  なんで、この裁判を支援するのかを、戸籍の差別的記載によって苦痛を強いられてきた生い立ちや、共同生活者との関係性のこと、婚姻届を出さないことについての相手の納得が得られないこと、認知届の差別性の問題等々、それぞれの思いが語られました。

  これらの自己紹介のなかで、口頭弁論というのはいいものだという意見が出ました。
  「このように、交流ができ、参加者の話を聞くことで、自分も屈辱的な思いをして涙を流したなと、胸がきゅんとなり、その時の感覚がよみがえらされた。怒りに疎くなっていたように思う。こうして皆で会うということは大切なことだと実感した。高裁判決以来初めてだ」
  ほんとうにそうです。住民票裁判の時は、高裁判決まで毎回、口頭弁論の度にこのような交流をもちました。それが楽しみでもありました。みんなの思いが支える裁判だからだと思います。

 次回口頭弁論は、7月26日(水)になりました
  - 傍聴が何よりの声援であり、励ましです -

 数は力なり、ということを実感させられる裁判です。前回の口頭弁論では立ち見まででたため、裁判長に大きな法廷を要求し、今回は45席の法廷にかわりました。次回日程が決まった後、次回法廷の話になりました。合議用の法廷をその都度借りるため、その場では決められないということでしたので、次回も大きな法廷をお願いしますと即要求しました。すると裁判長は、傍聴者をぐるりと見回して、「確かにこれだけの方がいらっしゃるのだから、小さいところでは駄目でしょうね」と頷いていました。(30名あまりの原告側傍聴者。被告側傍聴者も入れると36〜7名の傍聴者でした)
  22日に、「これが今回とれる最高の法廷です」と書記官より法廷の件で榊原さんに連絡がありました。車椅子の入れる法廷なので少し席が少なく32席ですが、「もし足りなくなったら、被告指定代理人に当事者席に入ってもらうようにします」ということでした。

  傍聴者が多いということは、裁判所にも大きなインパクトを与え、法務省の役人である被告側にも緊張とプレッシャーを与えていると思います。そして原告側である私たちにも大きな大きな励ましとなっています。また、私たちにも傍聴者同士にも、高揚感をもたらすなど、数の力が、相乗効果を生んでいくのではないかと思います。
  ぜひ、ぜひ、傍聴をお願いします!