001年4月20日 第六回口頭弁論報告


 原告 福喜多 昇

 第6回の口頭弁論にも、30名近くの方が駆け付けて下さいました。しかし、今回はなんと言っても96席の大法廷。さすがに空席が目立ちました。それでも、傍聴者の中にはわざと友人どおしバラバラに離れて座り、少しでも空席を少なく見せようと涙ぐましい努力をくれる人もいて……。また、開廷時間がいつもより1時間遅い2時30分だったことから、安心しすぎて、原告が少し遅刻、裁判所が開廷を待つというようなこともありました。そんなこんなで、開廷となりました。裁判所の人事異動で、今回から裁判長が変わりました。担当は外山裁判官です。
  今回は、原告から、準備書面(3)以下4通の書面と5つの書証を提出しました(Voice117号に掲載されています)

 被告書面に反論

 前回被告が提出した準備書面で、次のように主張しています。
  「差別記載の廃止」というのは、具体的にどうすればよいかが明確でなく、請求の主旨が特定されていない。嫡出子と非嫡出子の区別をなくすためには、原告当事者の戸籍のみではなく、全ての戸籍を変更しなくてはならない。また、原告は、続柄欄廃止を前提とした主張をしており、そのためには戸籍法の改正が必要である。いずれも訴訟としては不適法である。
 
 つまり、私たち原告の訴えが訴訟としての条件を満たしていないから、内容を判断するまでもなく、門前払いせよ、と言っているわけです(被告準備書面は、Voice115号に掲載)。どうしても内容論議を避けたいというのが、いつもながらの行政の基本態度のようです。
  これへは、以下のように反論しました。嫡出子・非嫡出子を区別しないということで内容的には十分特定されている。差別を廃止する方法は幾通りもあり、どれかでなければならないということではない。他の戸籍も全て変更しなければならないというが、たとえば原告の戸籍を「長女」と記載して、とりあえず解決する方法はある。続柄欄は廃止しても困らないようなものであるから、そこで差別する合理性はないと指摘しただけで、この訴訟で、直接に続柄欄の廃止を求めているわけではない。
  もっとも、「長女」と記載するなどというのは最悪の選択で、そうはならない(民事行政新議会での結論も違っていた)ことを十分承知の上で要求しているのですが。

 被告の追加

 この裁判の被告は、国、中野区、中野区長の3者で、請求の内容は、「差別記載の廃止」と「損害賠償請求」です。それぞれの請求について被告が違っていて、「差別記載の廃止」は国と中野区長を訴えました。実はこの訴訟を起こす時、行政訴訟の取消訴訟にすると、やれこれは行政処分なのかどうかとか、本題の「法の禁じる差別化否か」という論議に入る前のハードルが余りにも高すぎるため、民事訴訟として訴えた経過があります。
  ところが、被告を国とすることは問題ないのですが、中野区の方は、少々問題があったのです。行政訴訟の取消請求なら中野区長を訴えなければならないのですが、民事訴訟では中野区を訴えなければならないのです(あ〜、ややこしい)。というわけで、今回、差別廃止の訴えの方にも中野区を被告として加えました。
  国の代理人は、「中野区長に対する請求も維持するのか」と確認を求めてきました。まぁ、この部分は取り下げてもいいのですが、まぁついでということで維持することにしました。

 国に情報提供を請求

 今回の裁判期日に先立って、私たちは、被告に民事行政新議会で戸籍の続柄記載の差別撤廃を確認した内容を示すよう当事者照会を行いました。当事者照会とは、裁判当事者が、相手が持っている裁判に必要な情報を提供するよう求めるものです。
  今回要求した民事行政新議会での論議の内容は、会議の日も特定できていて、1995年11月16日のものです。
  しかし、国は、難癖をつけて書面(当事者照会に対する被告の回答。Voice117号に掲載)で拒否したため、今度は裁判所をとおして、裁判所から被告側に請求するよう送付嘱託と調査嘱託の申し立てを行いました(いずれもVoice117号に掲載)。裁判長は、「情報公開ということもあるので、検討するように」と被告側に求めました。

 裁判後弁護士会館で交流会

 以上のようなことが当日の裁判で行われたことになっているのですが、口頭弁論とはいえ、実際の裁判を膨張していても、口頭でこうしたやり取りが全て聞けるわけではありません。
  たとえば、準備書面については、事前に裁判所や相手側に送っておいたものを当日裁判長が、「原告から準備書面(3)が出ておりますが、これを陳述ということにします。」という一言で終わってしまうので、傍聴者にはチンプンカンプンということになってしまいます。そこで、裁判終了後、必ず弁護士会館に部屋を取って、その日の裁判で何があったかを弁護士の方から説明してもらいます。今回も20名余りの方が参加して裁判の報告をし、その後交流しました。
  参加していただいた皆さんありがとうございました。今後もよろしくお願いします。