東京都世田谷区長 殿 (FAX03−5432−3003)
 
 
戸籍のない子について住民票を作成しなかった貴区の行為が違法だとして争われていた裁判で、5月31日、東京地裁は、「市区町村長は、出生届の不受理により戸籍が作成されていなくても、記載内容が正確だと確認できれば、住民票を作成すべきだ」と述べて、貴区に住民票を作成するよう命じました。
 
この判決は、「出生届⇒戸籍記載⇒住民票作成」という従来の手順そのものを否定したわけではありませんが、例外的にではあれ、戸籍に記載されなくても住民票を作成することを命じた点で、画期的な判決であると思います。
 
そもそも住民票は、住民に対する行政サービスの要であり、家族関係の登録公証を目的とする戸籍とは制度趣旨が違います。そうである以上、住民票の記載を戸籍の有無に絶対的にかからしめる必然性はないのであって、戸籍以外の資料から住民票記載事項がきちんと確認できるのであれば、住民票を作成することにはなんら問題はないはずです。
 
貴区におかれましては、今回の裁判をきっかけにして、住民の福祉により適う住民票発行を目指してご努力いただきたいと思います。そのための教訓として、今回の判決については特に厳重に受け止め、控訴せずに受け入れるよう要望する次第です。
 
 
中央学院大学法学部教授(国際私法) 大村芳昭
 

総務省自治行政局市町村課 御中 (FAX03−5253−5520)
 
 
戸籍のない子について住民票を作成しなかった東京都世田谷区の行為が違法だとして争われていた裁判で、5月31日、東京地裁は、「市区町村長は、出生届の不受理により戸籍が作成されていなくても、記載内容が正確だと確認できれば、住民票を作成すべきだ」と述べて、同区に住民票を作成するよう命じました。
 
この判決は、「出生届⇒戸籍記載⇒住民票作成」という従来の手順そのものを否定したわけではありませんが、例外的にではあれ、戸籍に記載されなくても住民票を作成することを命じた点で、画期的な判決であると思います。
 
そもそも住民票は、住民に対する行政サービスの要であり、家族関係の登録公証を目的とする戸籍とは制度趣旨が違います。そうである以上、住民票の記載を戸籍の有無に絶対的にかからしめる必然性はないのであって、戸籍以外の資料から住民票記載事項がきちんと確認できるのであれば、住民票を作成することにはなんら問題はないはずです。
 
そこでお願いなのですが、総務省としても今回の判決を重く受け止めていただき、今後の制度改善につなげていただくとともに、世田谷区に対して安易に控訴を促すような行為は絶対にやめていただきたく、ここにお願い申し上げます。
 
 
中央学院大学法学部教授(国際私法) 大村芳昭