神奈川県秦野市の郊外の分譲地。敷地は隣接する南側が一段(約1m)高く、北側が一段(約80cm)低い、更に東西に長いといった条件である。当初、土地の仲介不動産会社より紹介されたハウスメーカーが計画したプランは、この敷地条件を考慮したとは思えないどこにでもある設計であった。そんな中、知人の大工さんより当社を紹介されプロジェクトが始まった。「しっかりしたデザインのできる設計士と信頼できる大工さんに建物を建ててもらいたい」、それがお施主様の何よりの願いであった。 設計では、この敷地条件と奥様が師範として教えられる茶道の「茶室」が最重要ポイントとなった。具体的には、一段高い南側の敷地にはもう既に建物が建てられており、採光が期待できない。建物(敷地)の中央に東西に抜ける二層半吹抜けた光の通路を設ける事で、採光を確保しかつ、住居部分と茶室部分が程よい距離を保つことができた。1FのLDKは可動間仕切りにより空間の利用が自由に調整できる。 2Fは、光の通路を介して主寝室と子供部屋が分けられている。外観は、北側の単調になりやすい立面をサッシの統一とALC+吹付塗装のパターンと配色により表情をつけている。施工では、遠方ではあるが仮設ハウスを造り、自社の大工を3人常駐(約3ヶ月)させ対応した。また、設計監理と施工管理を兼ねて、週1回は現場に足を運び責任もって調整した。 このような家つくりはあらゆる意味で決して楽ではない。しかし、結果的にはお互い(お施主様-設計士-施工者)の親密感が増し、より一層この家に対しての愛着が湧くことになる。