クリーニング工房CoCo施設長(当時)
(現)法人常務理事  綿貫 好子


 山田洋次監督の学校2という映画をご覧になられた方おいでですか? 養護学校を背景にした人情味あふれる映画です。
 北海道の方のクリーニング工場がでてきまして、そこが養護学校の生徒さんの職場実習の場ですが、非常に薄暗い所でガミガミやっているすごくいじわるな事業所として映画化されたんで、この設定はあまり好きじゃあないです。
 山田洋次監督にお手紙でも出して、今後クリーニング工場で一生懸命働いて、明るく元気でいる社員さん達を映画化して下さいなんてお願いしようかななんて思ったりするんですけれど、その映画の中で、軽度の知的障害のある方のセリフで

- 「重度の障害のお友達がいるんだよね、であの子は自分がばかだっていうことを分かっていないんだよ、僕は自分がばかだっていうことが分かるんだ、だから辛いんだ。 色々指導や注意を受けるけど、受けることは分かるんだけど、でも僕には出来ないことも分かっている、だから辛いんだ。」 -
 というセリフがあるのです。

 就労レベルにある方々というのは、そういうことを考えることのできる方がメインではないかと思うのです。

 それだけに、育ってくる中で、色々な心の傷を沢山おっています。

 話を聞けば、本当にあーこんな色々辛い思いをしてきたんだーと思います。

 お母さんに自分を受け入れてもらえない、そんな辛い思いを今でも引きずっている方もいらしゃいます。

 職場で実際に直接的に係わっていただく職業生活相談員の方々が、あなたの味方ですよ、なんでも言ってきてという姿勢で人間関係を築ければ、同じ注意をする言葉でもその子の心に入ることができます。

 精一杯なそういった熱意があれば、必ずついて来ますし、成長いたします。

 その人間関係が出来上がっていない所で、私はあなたの親のようにこういうふうに注意するんだよと言っても受け入れてはもらえないで悲しい思いをしてしまいます。

 話は変わりますが、知的障害のあるこの方々の目線から物事を色々見てきただろうかという自分に対する反省もあって、クリーニング工房CoCoの社員の皆さんには、自分の夢や目標を発表してもらっていますが、その一部をご紹介いたしましょう。
「僕は四月からクリーニング工房CoCoに勤めはじめました。
僕の仕事はタオルたたみや、結束や袋詰の仕事です。
半年経ちましたが僕は休まず元気に働いています。
夏の忙しい時には残業もやって、遅くまで働きました。
暑くて汗がどんどんでてきてとても大変でした。
これからも、もっと大変なことがあると思うけど、今度は正確に仕事をしていける  ように頑張ろうと思います。
僕は天然記念物の大きい木やお寺やお宮を見て歩くのがとても好きです。
家の手伝いも頑張ってやって、お父さんやお母さんを喜ばせたいです。
他人から信用されるような人になるように努力しようと思います。
それから、戦争の無い皆が仲良く暮らせる世界になったらいいなあと思います。」

 これが彼のマイ・ドリームです。

 それに対して、彼のお父さんからのメッセージです。
「息子が、クリーニング工房CoCoさんへお世話になって早半年以上になりましたが、何より嬉しい事は、休まず出勤でき、忙しいときには残業まで出来たことです。
 それも先輩職員の皆さんの暖かいご指導のお陰と感謝しております。
 五月で二十歳になり、来年はいよいよ成人式を迎えますが、彼なりに世の中に対する責任が果たせるようになることを望んでいます。 息子は家の手伝いを良くやってくれます。
 朝の生ゴミ捨てから、母親の手伝い、玄関の掃除、工場へ行くまでの時間休みなく働いてくれます。
 四人の子供がいますが、今までこんなに良く手伝ってくれる者はおりません。息子は私の自慢の種の一つです。
 これは遥かな望ですがもし将来、息子に良き伴侶ができればいいなとも考えています。夢ではありますが。     父より」
 
 こんなふうに、社員の皆さんから元気を頂いています。

社団法人 長野県雇用開発協会 「雇用開発」 2002   84 より
平成13年度 障害者職業生活相談員資格認定講習会 公演要旨より



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