2002年6月4日 第十一回口頭弁論報告


  原告 田中須美子

3人の裁判官による合議体での審理開始

  6月4日の第十一回口頭弁論のこの日から3人の裁判会による合議体での審理が始まり、初めて裁判長が登場(これまでは裁判官でした)しました。
  私たちが4月1日付けで提出した準備書面(8)「国際条約違反についての求釈明」がこの日陳述されました。この求釈明への釈明について、前回 3月6日の口頭弁論 で文書で行うことが約束されていたはずなのですが、国側代理人は、「これ以上回答するつもりはない」と一言言って終わりでした。えっ、嘘でしょう! 各省庁との打ち合わせがあるので時間がかかるからと言って待たせ続けていたその結果がこの回答とは、と驚き、代理人の後ろでぶつぶつ言っているうちに、次の話に移っていってしまいました。
  裁判長がどのような訴訟指揮を行うのかと思っていると、昨年の 第九回口頭弁論 (12月14日)で陳述した被告側の答弁書について、下記の質問を始めました。
  「被告側は、原告側による中野区を被告とした訴えにつき『却下』の答弁をしたが、却下だけでよいのか。原告の訴えの内容(本案)については答弁しないでよいのか」
  これに対し被告側はだいぶ戸惑い(?)、主張は既にしてあるがと言うと、裁判長は更に繰り返し、強圧的な言い方で本案についての検討を行うよう促しました。

 ■ 裁判長の質問の背景
  差別記載を止めよという訴えの相手を、私たち原告側は行政訴訟ではなく民事訴訟として提起したので、本来は国及び中野区とすべきところを(行政訴訟の場合は国及び中野区長となる)、国及び中野区長としてしまいました(但し、中野区についてはそれ以前から損害賠償の訴えの被告になっている)。そのため中野区を被告として追加申し立てし、後日中野区長に対する訴えの取り下げを申し立てました。この追加申し立てを被告側は認めず却下を申し立てたのですが、裁判長は追加の申し立てを認め、中野区への訴えに対する答弁を行うよう被告側に求めました。
  被告側は昨年12月14日の 第九回口頭弁論 で、中野区への訴えを却下する、その理由としては請求の趣旨が特定していない旨の簡単な答弁書を提出しました。その答弁が、請求の趣旨のみに限定されていて、差別記載の「合理性」については一切触れてなかったので、裁判長は心配して被告側にきつく言ったのではないかと思われます。

請求の趣旨の特定につき、原告側も裁判長から検討を求められる

  戸籍の続柄差別記載を止めよという私たちの訴えが記載の仕方を特定していない、などと被告側は 第一回口頭弁論 (2000年3月17日)から非難し続けてきました。
  この請求の趣旨を特定せよとの被告側の求めに、「区別しない記載をすることも区別する記載を止める場合に含まれるとの趣旨であり、区別をしないということで十分特定されている、差別を廃止する方法は幾通りもあり、どれかでなければならないということではない」旨回答しました。この私たちの回答に対し、裁判所は 第二回口頭弁論 (2000年5月17日)で、「原告側の回答は、区別をしない記載を求めるということであり、具体的方法は被告が考えよ、ということですね」と私たちに確認をした経過があります。
  にもかかわらず被告側は昨年12月14日の 第九回口頭弁論 に至るまで延々、請求の趣旨が特定していないと主張し、裁判終結を求め続け本案の内容に入ろうとしませんでした。

  今回裁判長は、この私たちの回答で十分なのかどうか再検討を求めました。議論がだいぶ前にさかのぼってしまったのですが、要は主張を補強するようにとの意味ではないかと前向きに受け止めることにしました。請求趣旨に具体的特定性が無い「抽象的差止請求」自身適法であるとの主張を、最近の論文等を引用して補強した準備書面を次回に提出する予定です。